脳が記憶を放棄してしまう「デジタル性健忘」に注意

この現象は、「Google効果」や「デジタル性健忘」とも呼ばれています。スマホで検索した情報は、覚えることができないというより、そもそも覚える必要がない情報と、私たちの脳はとらえているのです。

なぜなら、検索することで何度でも一瞬にして情報を得ることができるからです。そうすれば、わざわざ記憶に留めて必要なときに思い出すといった労力を使う必要がなくなります。「忘れたらまた調べればいいや」と脳は最初から記憶することを放棄してしまうのです。脳が持つ記憶という機能を、インターネットに頼って「アウトソーシング」しているような状態といえます。

普段の生活のように、いつでもインターネットへ接続できる状況であれば、私たちの記憶をアウトソーシングしていても支障はないのかもしれません。

しかし、私たちにとって、本当に情報が必要になるのはどんなときでしょうか? その一つに、災害などに見舞われた生死に関わる緊急事態があります。2011年の東日本大震災、私は仙台で被災しました。当時、インターネットは全く使えない状態になりました。

生死を左右するような極限状態で、人間の「生きる力」が試されます。多くの記憶をアウトソーシングしている人間が、生き残れるとは思えません。

インターネットを使うことが多い国ほど読解力が低い

もしもこの実験と同じような現象が、タブレット等のデジタル機器を用いて学習をしている子どもたちの脳活動でも表れているとしたら、極めて恐ろしいことに思えます。表面上は効率的に学習しているように見えても、実は学習した内容が子どもたちの記憶に残っていないかもしれないのです。

勉強机でスマホを操作
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経済協力開発機構(OECD)が2015年に発表した、世界72の国と地域に住む15歳の子どもたち約54万人を対象とした調査結果によると、「学校にあるコンピュータの数が多い国ほど数学の学力が低い」「学校でインターネットを使うことが多い国ほど、子どもたちの読解力が低い」ことなどが報告されています。