そもそもスマホは人間がラクをするために作られている

そもそも機械とは何のために作られたかというと、人間がラクをするためです。ラクをする、すなわち時間と労力を肩代わりしてくれるものに対して、私たちは便利であると感じ、対価を支払います。スマホを開発する側の技術者の方たちに【図表1】のグラフを見せたら、逆に大喜びしてくれることでしょう。人間の脳に負荷をかけないことが、スマホが便利な機械であることの証明になるわけですから。

私たちの脳は負荷がかかって初めて活動し発達していきます。人間にラクをさせるために作られた機械を使って、脳に負荷をかけるべき作業である勉強をするというのは、本来の目的と真逆のことを強いているのです。

私たちの脳は負荷がかかって初めて発達する

榊浩平(著)、川島隆太(監修)『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)
榊浩平(著)、川島隆太(監修)『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)

「ラクして稼ぐ」「ラクして痩せる――私たちはそんな見出しへすぐに飛びつきます。一方で、そんなうまい話はないことにも、薄々感づいているわけです。「ラクして脳を鍛える」こともまた、ありもしないうまい話の見出しに過ぎないのです。

「ラクをするな、頭を使え!」

昭和生まれの大学教授がこう言うと、古臭い考え方だと非難されるかもしれません。でも私は違います。平成生まれ、ゆとり世代の若手研究者です。危機感の強さに気づいてくれる方が少しでもいてくだされば、私が研究成果を発表した意味があったと思えます。

榊 浩平(さかき・こうへい)
東北大学加齢医学研究所助教

1989年千葉県生まれ。2019年東北大学大学院医学系研究科修了。博士(医学)。認知機能、対人関係能力、精神衛生を向上させる脳科学的な教育法の開発を目指した研究を行なっている。共著に『最新脳科学でついに出た結論「本の読み方」で学力は決まる』(青春出版社)がある。

川島 隆太(かわしま・りゅうた)
東北大学加齢医学研究所教授

1959年千葉県生まれ。89年東北大学大学院医学研究科修了(医学博士)。脳の機能を調べる「脳機能イメージング研究」の第一人者。ニンテンドーDS用ソフト「脳トレ」シリーズの監修ほか、『スマホが学力を破壊する』(集英社新書)、『オンライン脳』(アスコム)など著書多数。