「いま量産化しないと、世界との差は埋まらない」
岸田首相が4月4日の「再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」で「2030年までに普及」の方針を打ち出したが、政府のサポートをはじめとして日本の動きは鈍い。それはやはり、あくまでも既得権益に寄りそわんとする日本のエネルギー政策とも無縁ではないのだろう。宮坂さんは日本の遅れをこう指摘する。
「日本では研究所、大学、企業でデモサンプルは出している。でも、工場のラインを使って、生産工程でつくり始めないと、世界との差は埋まらない。どんなにいいものをデモサンプルとして研究所でつくっても、量産品となるとまた違うから。中国やヨーロッパでは、研究をちょこっとやったら、すぐに工場をつくって生産体制に入っているようなところもある。『宮坂さんたちは何もやらなくていいんです。ただ見ていれば。いずれね、あなたたちがやったことは評価されるから』と言われたりするけど、それは悔しいじゃないですか。だから、いま、もう助成金にも頼らず、自分たちで本気になって量産化しよう、とやっているところです。秋ぐらいまでには、工場ラインでつくったものをお見せできれば、と」(同)
ペロブスカイト太陽電池に弱点はないのか。これまで、主に指摘されてきたことは以下の3つ。長期の風雨に耐えられるかどうかの耐性の問題、発電効率がたとえばシリコン太陽電池に比べどれぐらいかという再現性の問題、そして、使用する鉛の有害性の問題。しかし、研究が進むにつれて、これらの問題は徐々に解決されてきた。唯一、鉛の有害性の問題が残っているといえば残っているわけだが、宮坂さんはこう言う。
「鉛は化学的に機能豊かで、他に置き換えられる材料はない。ただ、これだけ世界に普及して、徐々に市民権をとってきているので、たぶんペロブスカイトで使われる鉛は問題にはならないと考えています。基板の重量を含めて計算すると、使われる鉛の割合は極めて微量ですし、回収するインフラさえきちっと整えればクリアできると思っています」
一方、耐性に関しては、嬉しい誤算もあった。放射線に強いということが実験でわかってきたのだ。つまりそれは、宇宙に出しても耐性が確保されるわけで、宇宙空間での活用にも期待がかかる。