「アフリカの貧困をなくすのは民の力だ」という信念でアフリカンプリントのファッションブランド「RICCI EVERYDAY」を起ち上げた仲本千津さん。「年収は銀行員時代の半分、やりがいは数倍」と笑う。ウガンダと日本を往復する日々への熱い思いと志に触れた——。
アフリカンプリントが施された布を天日干しする女性
写真提供=RICCI EVERYDAY

メガバンクを辞め、ウガンダで働きながら起業ネタを探す

「大学院時代は『アフリカの貧困をなくす!』とか青臭いことを軽々しく言っていましたが、『どうやって実現するのか』と問われるとまったく答えられませんでした。そこでお金の流れや事業の仕組みを学ぼうと大手銀行に就職しました」

就職したメガバンクでは南アフリカやケニアなど、アフリカ諸国に赴任できる可能性もあったが、入社早々から銀行員には向いていないことが判明。仲本さんがやりたかったことは「富める人をさらに富ます」ことではなく、「持たざる人を引き上げる」ビジネスだということに立ち返り、2年半で転職することにした。

仲本さんが経営する代官山の直営店には鮮やかなアフリカンプリントの製品が並ぶ。
撮影=中村一輝
仲本千津さんが経営する代官山の直営店「RICCI EVERYDAY」には、鮮やかなアフリカンプリントの製品が並ぶ。

初心に戻りアフリカで仕事をしようと、農業支援の国際NGOに転職。2014年にウガンダ事務所に配属に。NGOで働きながら、同時に念願のアフリカで起業ネタ探しを始めた。あるとき友人から「おもしろい店があるよ」とローカルマーケットに誘われ、何気なく行ってみて衝撃を受けた。

「生地屋さんには、カラフルな柄のプリント生地が天井まで積まれていました。色柄が独特で豊富、どれでも選び放題『これがいい、これがかわいい、このほうがいい!』と宝探しのように楽しくて、気づいたら2、3時間経っていたほど。日本からの来客を必ずその店に連れていくんですが、みんな『かわいい!』と大はしゃぎでした」

独特な色柄が個性的なアフリカンプリント
写真提供=RICCI EVERYDAY
独特な色柄が個性的なアフリカンプリント

この体験で「アフリカンプリントは日本で売れる」と確信し、仕事にすることを決意。2015年ごろはまだディオールなどのハイブランドのコレクションでアフリカンプリントが注目される前で、日本でほぼ知られていなかったのもタイミングが良かった。