必要とされる場が女性たちに笑顔と自信を

アフリカンプリントは目を引くが日本の消費者はとても厳しい。縫製の精度など、市場で戦えるクオリティーに高めるために日本の顧客やショップスタッフとの情報交換を行い、使い勝手やデザインなどでアイデアを出し合い改良を重ねている。そのフィードバックを受け、ウガンダの職人が手仕事で一つひとつていねいに製品化していく。

「元々繊維産業が盛んで大きな縫製工場があり、工員には横のつながりがあります。採用は縫製スタッフのひとりが担当しています。彼女が知っている人で、技術があって信頼できて、やる気がある人なら誰でも雇っていいよ、とすべて任せています」

ウガンダの主要産業は農業で、平均月収は60ドルほど、国連が設定している貧困ラインぎりぎりの生活だ。土地が肥沃で自給自足はできるが、学費や医療費までは回らない。工房で働く人はほとんどが、夫の暴力から逃れるために農村から都市部にやってきたシングルマザーだ。有名大学を卒業しても2割ほどしか職に就けないといわれるほど、失業率が高い環境で、教育を受ける機会が少なかった女性たちが、子どもを抱えて働ける職場はゼロに等しい。生活苦から簡単に追い詰められてしまう彼女たちの現状を知り、自立を助けたいと工房を開いて7年。日本で多くのファンを得て通販サイトの伸び率は、創業以来、前年比200%にも上った。工房スタッフには現地平均月収の2〜4倍を支払えるまでに成長した。貯蓄をしたり、子どもの教育費を払えるようになったり、家電を買ったり、家を修繕したりと、スタッフの生活水準は確実に向上してきた。

工房で働く多くがシングルマザー。仕事が自信になり笑顔も増えた。
写真提供=RICCI EVERYDAY
工房で働く多くがシングルマザー。仕事が自信になり笑顔も増えた。

「目に見える部分もそうですが、日々の仕事を通じて彼女たちのマインドセットが変わりました。ボソボソ話していたような人も自信をもち、目を見て自分の考えを話してくれるようになりました。仕事を任されて必要とされていること、自らの収入で家族が養えていること、つくった商品が日本のお客様に喜ばれていることが自信になり、彼女たちの自己肯定感が高まるなら本望ですね。彼女たちに『今の自分が一番輝いている』と言われたときは、自分がやりたかったことはこれだ、とものすごい充実感を得られました」

日本で働く女性たちにも、仲本さんは同じことを感じることがあるそうだ。「自分にはできない」「自分なんて」と思い込んでいる女性が多いというのだ。

「スキルがないからと言っていた人でも、ショップなどで働いてもらうと、大活躍だったりします。還暦すぎていても、経験がなくても、人は任されることで成長するものなんですね。ウガンダや日本で彼女たちと仕事をしていると、私自身も刺激を受けるし、仕事を楽しめる女性たちをもっともっと増やしたいと思えるんです」