今の部署にこだわると昇進が遅くなる

藤井薫『人事ガチャの秘密 配属・異動・昇進のからくり』(中公新書ラクレ)
藤井薫『人事ガチャの秘密 配属・異動・昇進のからくり』(中公新書ラクレ)

新卒一括採用、定年制や役職定年制、さらには、大企業では20代で部長になることはほとんどないなどの実態等がある以上、年齢別の労務構成から推測できることは少なくありません。また、男女で勤続年数や役職昇進意向に差があること、女性活躍推進でポジティブアクションが求められていることなどをふまえると、男女別に労務構成を見ることにも意味があるのです。さらに、職種別や部門別、地域別などに分解していくと、より多くのことがわかってきます。

さて、本題に戻ります。昇進した先輩は、おそらく3年程度はそのまま課長を務めるでしょうから、その間は、あなたがこの部署で昇進することは残念ながらなさそうです。

では、3年後に先輩の異動や昇進でポストが空くでしょうか? 課長クラスをある程度定期的にローテーションする方針の会社であればともかく、そうでない場合はなかなか予測できませんが、多くの会社ではたいてい組織改編などを含めて5年に一度くらいは異動があるので、3~5年後といったところでしょうか。いずれにせよ、今の部署で課長になることにこだわると、昇進時期が遅くなってしまいそうです。

異動発令が出たら受けるべき

あなたが先輩並みの優秀人材で、先輩と同じく2年後に課長昇進させたいと会社が考えている場合は、あなたを次期課長候補にできる異動先を探すかもしれません。たいていは同一部署で係長クラスから課長に垂直昇進するので、異動先での係長経験期間を考慮すると、早いタイミングでの異動になるでしょう。

もし、近々、あなたに異動発令が出た場合、先輩に疎まれたのではなどと考える必要はありません。今の部署での課長昇進ではありませんが、あなたのキャリア形成を考えての異動なのではないでしょうか。その異動は喜んで受けるべきです。

異動発令がないようでしたら、もう一度シミュレーションしてみましょう。この部署での課長にこだわるべきか、ほかの部署への異動を模索するほうがいいか。それとも当面はプレーヤーとしての腕を磨くことに集中するほうがいいか。また、相談するなら誰がいいか。このほかにも、もうあなたには多くの選択肢が見えていそうですね。

藤井 薫(ふじい・かおる)
パーソル総合研究所シンクタンク本部 上席主任研究員

電機メーカーの人事部・経営企画部を経て、総合コンサルティングファームで20年にわたり人事制度改革を中心としたコンサルティングに従事。その後、タレントマネジメントシステム開発ベンダーに転じ、取締役としてタレントマネジメントシステム事業を統括するとともに傘下のコンサルティング会社の代表を務める。2017年8月パーソル総合研究所に入社、タレントマネジメント事業本部を経て20年4月より現職。タレントマネジメントを中心とした調査研究を担当。人事専門誌などへの寄稿も多数。