憲法違反が疑われるプランなのに…

③に関わる質疑では先に触れたように、旧宮家の養子縁組プランの問題点についても、当たり前ながら言及された。

憲法第14条には、国民平等の原則についての規定があり、その中で「門地(家柄・血筋)による差別」を他の列挙事項とともに、名指しで禁止している(第1項)。

ところが報告書では、旧宮家という特定の家柄・血筋に限って、同じ国民でありながら養子縁組という手続きによって、“特権的”に皇族の身分を新たに取得できるというプランを提案している。

これに対し有識者会議のヒアリングにおいて、憲法学者で東京大学大学院教授の宍戸常寿氏が「門地による差別」に該当し、憲法違反の疑いがあることを指摘された(令和3年[2021年]5月10日)。

この指摘は、別に突飛な新説や異説ではなくて、これまでの憲法学の通説をそのまま養子縁組プランに適用したに過ぎなかった。

「門地による差別禁止」の例外は天皇・皇族のみ

念のために、主な見解をいくつか紹介しておく。

日本国憲法は……天皇の世襲制をみとめているから……皇位の世襲に関連する限りにおいて天皇…および皇族をもって……一般国民とはちがった法律的取扱いを定めることは……憲法の容認するところというべきである(宮澤俊義氏『法律学体系コンメンタール篇1 日本国憲法』)
14条が「門地」によって差別されないといっている「国民」とは天皇・皇族をのぞく一般国民を指す(伊藤正己氏ほか『注釈憲法〔第3版〕』)
象徴天皇制に伴う天皇ならびに皇族の身分上の例外を除けば、日本国憲法は近代的意味の平等を徹底して保障しようとしていることがうかがえる(野中俊彦氏ほか『憲法I〔第4版〕』)
天皇・皇族(は)……皇位の世襲と職務の特殊性から必要最小限度の特例が認められる(芦部信喜氏、高橋和之氏補訂『憲法〔第4版〕』)

要するに、“門地差別禁止”という憲法上の一般的規定(第14条)の例外は、同じく憲法そのものに明文の例外規定(第1章、特に第2条)を根拠に持つ天皇と皇族(皇室典範特例法施行後は上皇も加わる)に限定される、ということだ。至って当然のロジックだろう。