質疑で問われた3つの柱

この質疑の柱は次の3点。

①有識者会議報告書に対する政府の姿勢

きちんと報告書の正しさを国会に説明できるのか? その内容に対して政府は責任を負えるのか?

②国会議論との関係性

国会でこのテーマについて「立法府の総意」が取りまとめられた際、その後の具体的な立法化のプロセスを政府はどのように見通しているのか?

③報告書の内容

そこで提案された2つのプラン=「女性皇族が婚姻後も皇室に残る案」「旧宮家系の国民男性を養子縁組で皇族とする案」それぞれの問題点に対して、政府はどう答えるのか?

これらのうち、最も重要な論点となるのは当然、③と思われた。ところが①②への質疑が進められる間に、思わぬ“落とし穴”が待っていた。それは何か。

有識者会議報告書に冷淡な政府の姿勢

先にも少し触れたように、政府は報告書への思い入れが薄く、「一応『尊重』はするけれど、その内容に責任を取るつもりはまったくない」ことが浮き彫りになった。

すなわち①をめぐる質疑の中で、報告書の内容は、政府として確定した政策決定ではなく、検討のプロセスの中途段階にあるもので、それゆえ閣議決定は行っておらず、国会での活発な議論に「資するもの」つまり“叩き台”以上の意味は持たない、という事実が早々と明らかになった。

「具体的な制度内容については、国会でのご議論を経て、今後、検討されていく」「政府としてはその結果を踏まえて必要な対応を行ってまいりたい」というのが、松野長官がこの時の答弁で繰り返す“決め台詞”になった。

岸田内閣は報告書の中身に対して、執着せず、責任を負うつもりもない。その結果、馬淵議員が報告書の弱点を鋭く衝いた問いかけを行っても、ことごとく“暖簾に腕押し”という格好になってしまった。

「国会でのご議論」に責任転嫁

そもそも有識者会議が設置されたのは、上皇陛下のご退位を可能にする皇室典範特例法が平成29年(2017年)6月に成立した時、国会が全会一致の決議として「安定的な皇位確保するための諸課題」について「先延ばしすることはできない重要な課題」とし、これについて政府が「速やかに」検討することを求めたことに対し、きちんと応答するためだったはずだ。

ところが、報告書ではこれについては事実上の無回答。目先だけの皇族数確保策にすり替え、本来の課題はさらに「先延ばし」を図る内容になっていた。

政府がそんな報告書をそのまま国会に回してきたのであれば、国会サイドとしては当然、その無責任さを問題視するのが筋だ。馬淵議員もそこを追及された。

しかし、松野官房長官の答弁は先のパターンの繰り返しだ。

「国会でのご議論をさらにお進めいただければと思います」と。

無責任こそ、“最強・無敵”と思わせるやり取りが続いた。

国会議事堂
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