女性の多い組織を崩壊に追い込む上司

パワハラ以外で、女性の心理的安全性を決定的に損なう行為は、仕事の丸投げと失敗後の放置です。ほとんどまともに指導をせずに、「若くてもお前に任せるから、結果だけ持ってこい。できたらほめるし、失敗したときは叱る」という上司がいます。

オフィスの窓の前に立ち、外を見てポケットに手を入れた考えを持つアジア人ビジネスマン
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この手の上司にもおおむね悪気はないんですね。自分があれこれ言われるのもいやだったし、若くても部下を信用して一度任せたら余計な口を出したくない。ただこれは、特に女性が多い組織においては、組織崩壊に直結します。特に入社してすぐの頃や若いうちは、社会や組織のこともわかりませんし、日本の女性は、男性に比べて「言われる前に気づかいをしろ」「空気を読め」などと言われて育っていることが多いはずです。

特に、心理的安全性を高める努力をしていない組織ほど、女性は「こんなことを聞いたら怒られるかも」「言葉の裏を読まないといけないのかな」などと思いがちです。また上司がムスッとしていたり、笑顔がなかったりしたら、それだけで自分が何かして機嫌を損ねたのかと思ってしまう方も多いです。特に若いうちは、上司から「どうだった?」「できているかな?」などと、こまめに途中経過について声がけしてほしいものです。声がけしてもらえない、というのは無視、すなわちいじめと同じだと言う人もいます。女子高のいじめは無視だ、などとよく言われますが(女子高に行ったことがない私が言うのもなんですが)、仕事の丸投げや失敗後の放置は、まさにこれと同じではないかと私は思います。

「つらそうなときは放置」で最悪の事態へ

上司が話しかけないので自己流でやって、どんどん上司の期待とずれていき、結果を持っていったら怒られる。それでも「どこが悪いか自分で考えろ」的な空気になって、同じことの繰り返し。失敗しても、この手の上司は「つらそうなときは少し放っておけば回復するだろう」などと思って、部下が自力で起き上がるのを待っている。そのうち部下は坂を転がり落ちるように自信も成績も落ちていき、最悪、退社や転職を考えるようになってしまいます。

いまだに「教育機関じゃないんだから、仕事は盗むべきだ」などと言う昭和上司がいます。もちろん仕事によっては、言葉では説明しにくい「匠の技」のような部分があるかもしれません。そこは盗んでもらうとして、それ以外については、きっちり言葉で指導することが必須です。部下の能力を評価するのは、それからです。丁寧に教えても、その通りにやらなかったり、できなかったりすれば、そのときに判断すればよいのです。