癒やされたのは母親の私だった

2つ並べて娘と息子の本をランダムにブチ込んでいた本棚を娘の本棚と息子の本棚1つずつに分け、二段ベットを軸に両サイドを娘の部屋と息子の部屋にしました。

まだ未就学の息子の机は、私が20代の時に漫画を描くのに使っていた座卓とテーブルライトを使用しました。そこの前に息子が保育園で作った作品を貼ったり、拾ってきた松ぼっくりとか並べたり、左利きの息子の左利き用のハサミを道具箱に入れて、それを置く棚も机の横に置きました。

そうやって、息子のマイスペースができた時、私はなぜか、ものすごく感動して心臓が打ち震えるような熱い気持ちになったのです。なんで?

それまで息子のモノは、いつも家族の誰かのモノと混ざり合う形で家の中の至る所に点在している感じでした。だけど「ここは息子の場所」と決めたことで、なんだか息子自身の尊厳みたいなものがハッキリしたような、そういう感覚がありました。

使い古した机と組み立て棚に息子のモノを並べただけなのに、神聖な感じがすごくしたんです。今まで、他の家族のところに混ぜちゃってて悪かったなと思いました。もっと早く作るべきだったのかもしれないけど、仕方なかった。

息子の部屋を作って癒やされたのはまず母親の私でした。これには本当にビックリしました。

息子の部屋を作って癒やされたのはまず母親の私でした
イラスト=田房永子

「娘の部屋」ができた感動

当の息子に見せると、「おっ いいねぇ」と一言。しばらく座って、そこに置いてあるもので遊んでましたが、普段はリビングで遊ぶのがほとんどで、まだマイスペースを使いこなしてません。でも息子の部屋を作れて本当によかったと思いました。

小5の娘は、自分の部屋をかなり活用しています。こちらもこちらで作ってよかったなと思いました。

私は子どもの頃、自室ができた時にカーテンやらラグマットやら何やらすべてを母が決めてしまっていて、それが母好みのピンクのブリブリのデザインで、自分の部屋なのに居心地が悪くてやだなと思っていました。友達も同じことを言ってる子がいたので、「自分が親になったら子ども部屋のカーテンとかは子どもに選ばせるぞ!」と決めていました。

そういうわけで、娘をニトリに連れていってラグマットなど選んでもらいました。まあ、色くらいしか選ばせられなかったけど、娘も「これがいい!」と気に入った感じだったし、私は内心ホッとしました。娘の部屋にそれらをポン、と置いただけで一気に「娘の部屋」っぽくなって、これもなんだか私のほうが感激しました。

「捨てる・手放す」時間を確保する

今もまだ家の中が完璧に出来上がってる感じじゃないので、日々、作りながらですが、ベースの配置ができました。

今後また、中学生になったりで、きっと部屋の模様替えについては1年ごとくらいに考えなきゃいけない感じだと思います。

そのたびに「捨てる・手放す作業の時間の確保」を一番に計画を立てればきっとうまくいく、と思った年末でした。

田房 永子(たぶさ・えいこ)
漫画家

1978年東京都生まれ。2001年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞(青林工藝舎)。母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を2012年に刊行、ベストセラーとなる。ほかの主な著書に『キレる私をやめたい』(竹書房)、『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』(河出書房新社)、『しんどい母から逃げる!!』(小学館)などがある。