業者は、自分の「土俵」に引きずり込もうとする
そんな反応を見てきて確信したのが、とにかく業者は、自分の「土俵」に引きずり込もうとするということでした。
その土俵とは、「その投資(商品)が、いかに素晴らしいのか」ということ。
それが未公開株投資であれば、その企業(銘柄)の持つ「有望な特許」や「最新のIT技術」などを語り、さらには社長の華々しい経歴、雑誌等のメディア掲載実績などをアピールしてきます。そのよどみのない説明は、これは相当トレーニングされているな、と感じずにはおられませんでした。
業者とすれば、とにかく、その投資(商品)がスゴイとさえ思わせれば、すなわち、自分の「土俵」にさえ引きずり込めば、あとは相手が勝手に(これは必ず儲かると思って)盛り上がって投資してくれる可能性が高いわけですから、とにかく「土俵」に引きずり込みたいわけですね。
ですから、「じゃぁ、あなたが投資すれば?(なぜ、投資をしないの?)」と、土俵とは違うところに関心を持たれては困るのです。なので、そのような質問が出ても、決して深入りせずにサラッといなして、再び土俵に引きずり込もうとするのです。
土俵にさえ乗せれば、その投資(商品)そのものに関心が集中するので、そのような質問をされる可能性は低いのですから。そして、どうしても土俵に乗ってこない人は、向こうも諦めるわけです。
社長直々のセールスで未公開株に即決投資して大失敗
このように、私は今でこそ冷静に分析をしていますが、かつて、業者の土俵に上がってしまい、損失を被ったことがあります。
それは、某ホテル運営会社の未公開株投資でした。
その勧誘時には、「豪華な施設」だけでなく、「世界の幸せとつながる」といった、他のホテルとは一線を画すコンセプトを熱く語り、やはり、その会社の素晴らしさと滔々と訴えてくるのでした。
ただ、他の未公開株投資セールスと違ったのは、その勧誘が、社長直々だったこと。
とある異業種交流会の場で話が盛り上がり、不意に投資勧誘の話となったのでした。なので、私もまったく身構えてはおらず、ガードが下がっていたことも、相手の土俵に上がってしまった要因でした。
そして、土俵に上がってしまったが最後、滔々と語る世界平和への思いは純粋にスゴイと思い、(一人で勝手に盛り上がって)投資を即決してしまいました。今、冷静に考えれば、理念先行のかなり荒唐無稽な経営理念でしたが、そのときは土俵に上がってしまったがゆえに、視野が極端に狭くなっていたわけです。
現在、その会社は上場していません。
というか、ホテル運営実績などまったくない状態が続いており、年1回の株主総会通知以外、連絡はまったくなし。当然、配当金はなく、未上場株式なので、売るに売れない状態です。10万円程度の投資額でしたが、これは丸損になったと諦めております。土俵に上がってしまってからでは、冷静な判断は難しいことを、今になって実感している次第です。