とにかく、企業の素晴らしさを語りたい
そんな丁寧な回答にホッとした私は、調子に乗って、「でも、ほぼ儲かるのなら、なんとかして、ご自身が手に入れたいのではないですか?」と、少々あおるような聞き方もしました。それには、「いや、それができれば、ねぇ……」と言葉を濁し、すぐさま、「でも、この企業の特許は、本当に注目されているのですよ」と、銘柄の有望性を語ります。
さらに私は、「では、友人名義で買ってみるとか?」と、余計なおせっかいを言ってみるも、「さすがに、それは、ねぇ……」と歯切れが悪くなり、すぐさま、「でも、この企業の技術は、学会でも認められているんですよ」と、流暢に切り返してきます。
ただ、なんだか、話がかみ合わず、何とも言えない違和感を覚えたのでした。
こちらが何を言っても、「どうしても社内規定で買えない」といった感じでサラッとやり過ごし、すぐに話を、その企業の特許や技術、社長の経歴などに切り替え、いかにその銘柄が有望なのかを語ってくるのでした。
ちなみに、論点をちょっとズラして、「上場の話はどこまで進んでいるのか」「過去に上場した銘柄を取り扱ったことはあるのか」といった質問をするも、それらについてもサラッと、「そのあたりは守秘義務がありまして……」と深入りさせず、やはり、銘柄の有望性を滔々と語ってくるのでした。
「かわいそうな人」と捨てぜりふを吐いた営業マン
実は当時、未公開株投資だけでなく、「排出権取引」や「FXの自動運用システム」など、他にも、さまざまな投資話のセールスを受けておりました。そして、そんな投資セールスの対応に慣れてきた私は、それらのセールスに対しても積極的に、「じゃぁ、あなたが投資をすれば」的な質問をしてみるのでした。
それに対する対応は、ほとんどの業者は「規定でできない」の一点張り。
中には、「私が投資してしまうと、皆さまへの販売枠が減るので申し訳ない」といった理由もありましたが、いずれにせよ、勧めてくる投資商品を、実際に自分でも投資している営業マンは皆無でした。
そして、彼らは話題をすぐさま切り替え、「排出権取引は地球温暖化を食い止める」「自動運用システムは世界で認められている」など、その投資(商品)の将来性を語り、それらがいかに有望なのかを、再び熱く語ってくるのでした。一度、「それほど素晴らしい投資なら、やっぱり自分で投資していないとおかしいですよ」と、ねちっこく食い下がった時には、「人を信じられないなんて、かわいそうな人ですね!」との捨てぜりふを吐かれ、ガチャリと電話を切られたこともありました。