「制度恒久化・生涯投資枠の設定・売却枠の再利用」の恩恵

これまでは年間投資枠は設定されていたものの、非課税枠の持ち越しができないというルールにより、その年で枠を使い切れない場合はそのままになるという仕様でした。また、年間投資枠も「新規に投資する金額」とされていたため、売却しても枠の再利用はできませんでした。

統合NISAでは、資産を活用する際の出口戦略がシンプルなものになったので悩む部分が少なくなった点もありがたいです。定年後から統合NISAを始めても、30年・40年と時間をかけて運用しながら取り崩すこともしやすくなりました。

また、FIREを実践している人たちにとっても朗報です。FIREにおける資産の取り崩しは、毎年の資産運用で増えた金額の範囲内で行い、資産自体は減らさないことが必要です。その考え方に「4%ルール」というものがあります。「投資資産の4%以内に生活費を抑えられれば、資産が目減りすることなく生涯暮らしていける」という考え方が4%ルールです。

しかし実際に資産を引き出す際、株や投資信託・ETFであれば約20%の税金がかかるので、年5%で運用しないといけないという実態があります。統合NISAを活用すれば4%ルールが利用しやすくなります。

そして、売却枠の再利用が可能になり、NISA内でポートフォリオのリバランスがしやすくなります。現行NISAは売却しても非課税枠は復活しないのでリバランスがしにくく、NISA外の資産で調整する必要がありました。NISAだけで資産運用している人にとっては不便な仕様です。その点、統合NISAでは、リスクとうまく付き合うためのリバランスがしやすくなりましたので、NISA活用の戦略も広がります。

統合NISAの活用方法3パターン

ここからは統合NISAの活用方法をお話ししますが、大前提として、「コア・サテライト戦略」を基に統合NISAの活用を考えます。

コア・サテライト戦略とは、資産を安定的に運用する「コア」と、積極的に運用する「サテライト」に分け、資産を守りながら堅実に利益を狙う方法です。資産のうち、コア部分は7~9割と多めに確保しておき、サテライトは残りの1~3割で運用します。

コア資産のメインはインデックス型・バランス型の投資信託やETFです。サテライト資産のメインは個別株やアクティブ型の投資信託など値動きの大きい金融商品です。ポイントは、資産を分散してリスクを減らすこと。コア・サテライト戦略は、お金を減らさずに増やす戦略です。

統合NISAの活用方法を3パターン考えてみました。

①【コア資産】つみたて投資枠だけを活用

統合NISAをコア資産の運用で活用するという方法です。例えば、インデックス型投資信託へ投資することにし、「つみたて投資枠」だけを活用します。「株価下落が続く今こそ仕掛けたい…暴落相場に強い『全世界株式インデックス』四天王を徹底比較」で紹介したような、全世界株式インデックスファンドに投資をするのが一つの手です。

毎月10万円を積み立てると、15年間で投資金額は1800万円となります。

仮に、年5%で運用できれば、15年後は約2673万円となります。それ以降は積み立てができませんが、非課税期間は無期限なのでその後も売却せずに運用を続けた場合も試算したデータは次の通りです。

【図表】毎月10万円を積立投資した場合(元本総額1800万円が最大)

積立元本が1800万円となった後も、その資産を20年間運用し続ければ、約7092万円になる計算です。なお、当然運用に絶対はないので、必ず年5%で運用ができるということではありません。あくまでも数値はご参考です。