難しい仕事を簡単に引き受け、失敗したら部下のせい

「オレの部下でよかっただろ?」と直接、部下に同意を求めたりすることもあります。また、よくあるのが、今目の前にいない人をおとしめることで、周りに有能さをアピールするといった言動です。たとえば「あのクライアントは全然わかっていないから、オレがここまで説明してやらないと理解できないんだよ」「あの案件は、隣のチームの○○が担当したらしいけど、1週間もかかったらしいな。オレだったら2日でできるんだけどな」などと吹聴したりします。

それだけなら、ただの「イタい人」ですが、問題は、自分の有能さを知らしめたいがために、難易度の高い仕事を「できます!」と簡単に引き受けてしまうことです。

ただ、引き受けたのは上司でも、実際苦労するのは部下たちです。「こんな難しい仕事を、こんなに短い納期でやるなんて無理でしょう!」と反論しても後の祭り。それでトラブルが発生しても、上司の方は「部下の能力不足のせいだ」と捉えて自分の責任だとは考えません。

「できない」が受け入れられない

このタイプの上司は、「肥大した万能感」を抱えています。

小さい時は、誰でも万能感を持っています。周りの大人や、年長のきょうだい、友達がやっていることを見て、「自分にもできるはず」と考えます。そして、高いところに登ろうとしたり、飛び降りようとしたり、大人が使っている機械や道具を使おうとしたりします。でも実際にチャレンジしてみると、できたりできなかったり。そうして挑戦と失敗・成功を繰り返すなかで、現実と折り合いをつけていきます。

しかし、たまたま親や先生、友人などの人間関係や環境に恵まれて、自分の望んだことがかなってきた人や、親が敷いてくれたレールの上を歩み、大きな失敗や挫折をすることなく生きてきたという人もいます。うまくいかなかったとしても、親や環境のせいにできるので悔しくもありませんし、自分の力が足りないせいだと考えないので「失敗」や「挫折」とは捉えません。

結局、子どもの頃に持っていた万能感を持ったままで大人になってしまい、理想と現実の間のギャップを埋めることができません。でも仕事では、自分は「できる」と思っていても実際は「できない」ということがたくさん出てきます。そこで自分の抱える大きすぎる万能感が傷つけられることが許せず、失敗も周りのせいにしてしまいますし、有能さをアピールしないと心が持たないというわけです。

このタイプの人たちは、「すごく忙しい」「全然寝てない」「体調は悪いけれど頑張っている」といったアピールをする傾向もあります。また、絶えず自分の万能感が傷つけられる恐怖を抱え、心が満たされずにイライラしていることも多いのです。