誰もが、問題を解決する力を持っている

名取芳彦監修『ぶれない心をつくる ポケット空海 道を照らす言葉』(河出書房新社)
名取芳彦監修『ぶれない心をつくる ポケット空海 道を照らす言葉』(河出書房新社)

では、煩悩を取り除くにはどうすればいいでしょうか。答えは、明快です。苦しみを生む今の考え方をやめる。それだけでいいのです。

もちろん、それは一朝一夕にできることではありません。しかし、決して不可能なことではないはずです。仏性があるとは、誰もが自分の中に、問題を解決する力を持っているということだからです。

先ほど、怒りの原因は「都合通りにならないこと」だとお話ししましたが、これは、人間が抱く苦しみ全般に通じます。その原因を自力で解決していけば、“地獄”を脱出できます。それには、ふたつの方法があります。

「ありのままの自分」には力がある

ひとつは、自分の力の及ぶ範囲で、「都合通り」になるように努力して願いを叶えることです。やりたいことがあるなら、時間をとってやってみる。希望の職業があるなら、その仕事に就く方法を調べてみるなど、できることをやっていきましょう。

自分の能力だけでは難しい場合は、もうひとつの「都合を少なくする」という方法を使います。天気や気候は希望通りにならないので、仕方ないとあきらめて快適に過ごす方法を考える。また、物価が上がったのであれば、安い予算で工夫する。このように対処すれば、自分なりに解決していけます。

大丈夫。“ありのままの自分”には、それだけの力がありますから。

焦らず取り組めば必ず変化を実感できる

長年続けてきた考え方を変えるには、ある程度の時間がかかります。時には、思った通りに行かない時もあるでしょう。そんな時に、自己否定や後悔を繰り返すのは、得策ではありません。「迷いの再生産」につながるからです。つまずいたら、改善しながら取り組めばいいのです。その過程を繰り返すうちに、必ず変化を実感できる時が来ます。焦らず進みましょう。

名取 芳彦(なとり・ほうげん)
元結不動密蔵院住職

1958年、東京都江戸川区小岩生まれ。密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所所長。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。密蔵院写仏講座・ご詠歌指導など、積極的な布教活動を行っている。主な著書に、『気にしない練習』『人生がすっきりわかるご縁の法則』『ためない練習』『般若心経、心の「大そうじ」』(以上、三笠書房《知的生きかた文庫》)などベストセラー、ロングセラーが多数ある。