【フィンランド】多様性を労働力に

男女平等や働きやすさでは世界トップレベルのフィンランド。象徴的なのは、世界最年少の国家首席として34歳で就任した1児の母、サンナ・マリン首相。政権発足当時、19人の閣僚のうち12人が女性、連立政権5つの党首もすべて女性となった。

Finland/フィンランド共和国

「すでに民間企業の取締役の約30%が女性。32年までにEU目標の40%を達成しようというのが次のターゲット」と、フィンランド在住30年以上のフリーランサー前薗香織さん。男性育児休暇、妊娠から子育てまでの手厚い支援策、保育所の待機児童ゼロ、男女平等の職場環境と制度設計を世界に先駆けて実現してきた。

高い税金を払っているからこそ、フィンランドでは「法にある限りはその権利を主張すべき」という考え方がある。国や企業のリーダーたちがきちんと実行できているのか国民一人一人が意識しているという。女性たちも理不尽なことがあれば、自ら「法にあるのになぜ守られない?」と声を上げて交渉するそうだ。

そして、フィンランドはすでに次のステージに動きはじめている。出生率低下と高齢化が深刻となり、労働力不足は大きな課題だ。だからこそ移民を受け入れ、女性だけでなく誰もが働きやすい環境をつくることは必然になっている。

「国としては移民や少数民族、性的マイノリティーを含めた本当のダイバーシティの実現にかじを切りました。従業員30人以上の会社は、多様性の目標計画を作成し、2年ごとに達成できたか見直しすることが義務付けられました」(前薗さん)

どの国も共通しているのは積極的な国や企業の支援策と、女性たち自身の前向きな意識改革。実は、日本も女性が働くための支援制度は世界トップレベルにある。古い慣習からの脱却や男女双方の意識改革が新たな扉を開くのかもしれない。

写真=Getty Images 協力=ジェトロ(日本貿易振興機構)

岩辺 みどり(いわなべ・みどり)
ライター