アジアのマレーシア、中東のドバイ、北欧のフィンランドの3国より、現地在住の女性たちからリアルな声をリポート! ジェンダーギャップ指数120位の日本が学べる知恵とは。
ジェンダーギャップ指数(2021年)

【マレーシア】ITや電子で女性活躍

2021年、ジェンダーギャップ指数120位の日本の少し上、112位にいるのは多民族国家、マレーシア。電子電気産業などの成長が目覚ましく、マレー系、中華系、インド系が主な人口を占めているが国の言語はマレー語、国教はイスラム教だ。

Malaysia/マレーシア

クアラルンプールに駐在するジェトロ職員の吾郷伊都子さんは言う。

「04年に政府が公的部門での女性管理職比率を3割にすると目標を掲げ、10年に達成。21年9月には38%まで伸びています。政治でも閣僚約40人のうち5人が女性。スタートアップ支援機関や自動車協会の会長、中央銀行の総裁などは、みなマレー系女性です。民間では、市場調査アプリで成功し、フォーブス誌の『Asiaʼs Power Businesswomen 2021』に選ばれたナディア・ワンをはじめ、スタートアップ企業のトップにも女性の姿があります」

親族との同居も多く、女性の家庭での役割が大きい。意識改革や保育所整備も今後の課題だという。

女性人口に占める女性就業者の割合と管理的職業従事者に占める女性の割合/役員に占める女性の割合

【ドバイ】石油の次に女性の力を

同じイスラム教国家であるが人口の約9割が外国からの投資家労働者で、「エミラティ」と呼ばれるアラブ系自国民は約1割しかいない特殊な環境なのが、この50年で急成長した砂漠の中の未来都市ドバイ。20年から21年で同指数の順位を48も上げたアラブ首長国連邦(UAE)にある。公的分野では労働者の女性比率が66%と過半数を占め、管理職の比率も30%を超えている。ただし「活躍は外資系企業の外国人女性が大半であり、今後の課題はエミラティの女性たちの活躍」と、ジェトロ・ドバイ事務所次長、吉村優美子さん。

Dubai/ドバイ(アラブ首長国連邦)

「エミラティの家庭は保守的な家も多く、女性は早くに結婚・出産して家のために尽くすものだという思想も根強い。民間企業でエミラティ女性はほぼ見ず、政府機関や政府系企業で海外留学から帰国した王族や富裕層の子女のみが活躍しています」

これまでは豊富な石油収入を元手とした政府からの支援や外資系企業のスポンサー収入などで潤沢な不労所得で生活できたエミラティが多かった。しかし、政府は今後の経済や産業の変化を懸念。自国民の労働力をもっと活かそうと、エンパワーメント政策へとシフトした。女性活躍もその大きな柱の1つ。

「女性たちは、働けば経済的自由が得られ、結婚するかどうかも自分で選べると、自己実現の手段として高い期待を持っています。高学歴で英語も使いこなす女性が多く、メイドを雇うのも一般的。今後はもっと増えていきそうですね」(吉村さん)

宗教上の理由で金・土曜が休みだったUAEだが、22年から土・日曜休みに変更。22年2月には労働法が改正。産休が45日から60日に延長され、世界標準の働き方、そして女性活躍へと動きだしている。

【フィンランド】多様性を労働力に

男女平等や働きやすさでは世界トップレベルのフィンランド。象徴的なのは、世界最年少の国家首席として34歳で就任した1児の母、サンナ・マリン首相。政権発足当時、19人の閣僚のうち12人が女性、連立政権5つの党首もすべて女性となった。

Finland/フィンランド共和国

「すでに民間企業の取締役の約30%が女性。32年までにEU目標の40%を達成しようというのが次のターゲット」と、フィンランド在住30年以上のフリーランサー前薗香織さん。男性育児休暇、妊娠から子育てまでの手厚い支援策、保育所の待機児童ゼロ、男女平等の職場環境と制度設計を世界に先駆けて実現してきた。

高い税金を払っているからこそ、フィンランドでは「法にある限りはその権利を主張すべき」という考え方がある。国や企業のリーダーたちがきちんと実行できているのか国民一人一人が意識しているという。女性たちも理不尽なことがあれば、自ら「法にあるのになぜ守られない?」と声を上げて交渉するそうだ。

そして、フィンランドはすでに次のステージに動きはじめている。出生率低下と高齢化が深刻となり、労働力不足は大きな課題だ。だからこそ移民を受け入れ、女性だけでなく誰もが働きやすい環境をつくることは必然になっている。

「国としては移民や少数民族、性的マイノリティーを含めた本当のダイバーシティの実現にかじを切りました。従業員30人以上の会社は、多様性の目標計画を作成し、2年ごとに達成できたか見直しすることが義務付けられました」(前薗さん)

どの国も共通しているのは積極的な国や企業の支援策と、女性たち自身の前向きな意識改革。実は、日本も女性が働くための支援制度は世界トップレベルにある。古い慣習からの脱却や男女双方の意識改革が新たな扉を開くのかもしれない。