協力しながらできること:親と先生のコミュニケーションを密にする
親と先生が協力して連絡帳などの形でコミュニケーションをとり、子どもの苦手なことをサポートできたら、その子は学校で過ごしやすくなります。必要なサポートは子どもによって異なります。連絡帳でうまくいく場合もあれば、「持っていってね」「持ってきた?」という声かけを増やすことが有効な場合もあります。いろいろなやり方を試しながら、よい対応方法を探っていきましょう。
通級や支援級が子どもの保険になるケースもある
ただ、中には親と先生ができるかぎりのサポートをしても、困りごとが解決しない場合もあります。そのときには、また違う方法を考えます。そこで特別な場の利用が一つの選択肢となります。
例えば、通常学級ではいろいろな困難が解消しにくい場合に、「通級指導教室(通級)」や「特別支援学級(支援級)」などを利用することで、より細かなサポートを受けられるようになり、困難が解消することがあります。
その場合、これらの教室・学級が子どもにとって「もう一つのサポート」になるわけです。どの教室・学級を利用するかによって詳細は異なりますが、例えば、通常学級に在籍して通級を利用する場合には、親からのサポート、通常学級の先生からのサポート、通級の先生からのサポートという形で、多様な支援を受けられるようになります。一つのやり方では難しくても、別のやり方を試せるようになるわけです。
特別な場を利用すると、子どもが学校生活で困ったときに、それをカバーするための支援を受けることができます。私はそれが特別な場を利用することの重要なポイントだと考えています。
特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事。精神科医師。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年より、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より現職。日本自閉症協会理事、日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本児童青年精神医学会理事。著書に『自閉症スペクトラム』『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(ともにSB新書)などがある。