「2番目に近いところ」を使う

3点目は「体を動かす」です。過眠になりがちだからこそ、日中はしっかりと動いて体を疲れさせると、質の良い睡眠を得られます。また血流アップや自律神経を整えることにもつながります。

ただ、いきなりウオーキングや筋トレを始めるのはハードルが高いと思います。まずは朝、起きたときに布団の中で伸びをする、布団から出て水を飲むなど、家の中でできることからスタートするとよいでしょう。

また、テレビやスマホを見るときは、寝転ばず椅子に座る。外を歩くときは、だらだら歩くのではなく早歩きや大股歩きをする。できるだけエスカレーターやエレベーターを使わず、階段を使う。こうして、日常生活の工夫をします。

「2番目に近いところ」を使うのも効果的です。例えば、オフィスでトイレに行くときは、一番近いところではなく、2番目に近いトイレを使う。買い物も、一番近いスーパーではなく、2番目に近いスーパーを利用する。車を使う人なら、あえて少し離れた駐車スペースに止める。こうした工夫で、日常の活動量を増やすことができます。

冬季うつは、春が近づき暖かくなると自然に良くなることが多いですが、そのまま悪化して本格的なうつに移行することもあります。ですから「どうせ暖かくなればよくなるから」と放置せず、さきほど挙げた3点に気を付けて生活習慣を改善し、予防してほしいと思います。

子どもも「冬季うつ」になる

冬季うつは、大人だけでなく、子どもがなることもあります。もともと子どもは、大人に比べて自律神経の調整が苦手です。10月ごろから調子を崩す子どもが出てきますが、1年のうちでも2学期は長いので、なかなか休んで回復する機会がないままになってしまうのです。

症状は、大人と同様に、疲れやすい、思考力や集中力がにぶる、元気がない、夜早く眠くなって寝るのに朝なかなか起きられない、すぐにお腹がすいてお菓子などの間食をするようになる、などがあります。

保護者ができるケアとしては、やはり先ほど挙げた3点がポイントになります。できるだけ日光を浴びるように、一緒に出かけたり、運動するよう声をかけたりしましょう。

食事については、保護者がある程度コントロールしてあげましょう。家にお菓子を置いておくと、子どもはつい食べ過ぎてしまうので、なるべく買い置きをしないようにしたり、低カロリーでトリプトファンが豊富なものを選ぶようにするとよいでしょう。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。