消費者が求める手入れの簡便性に応えた

振り返ると10年、「ステンレスマグ」という新たなブランドを開発する際、「なぜ?」という起点になったのは、「私たち(生活者)が本当に欲しい商品を作りたい」でした。

それはそのまま、同社のビジョンである「暮らしを創る」と重なるでしょう。

また、次の「どうやって?」でフォーカスしたのは当初、「色と質感」の追究でした。

ただその後、時代は変わり、「手入れの簡便性」を求める声が強くなった。そこで20年9月発売の商品(-ZA型)から導入したのが、手入れしやすい「シームレスせん」。

先のパッキンとせんを一体化させ、パッキンを外して洗う手間をなくした画期的な構造です。これは、「HOW(どうやって?)=構造の改良によって」で実現した、「WHAT(何を)」に当たる部分でしょう。

つねに消費者の声を聞き、改良を続けるステンレスマグ。長く愛される理由の一つは、ブランド開発の起点となった「WHY?」が、ブレずに今も社内で共有され続けているからではないでしょうか。

牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)
マーケティングライター、世代・トレンド評論家、インフィニティ代表

立教大学大学院(MBA)客員教授。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』(ともに日本経済新聞出版社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)、『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)ほか多数。これらを機に数々の流行語を広める。NHK総合『サタデーウオッチ9』ほか、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。