2010年に発売され1年で100万本を売った象印のステンレスマグ。その後も改良を続け今年発売された新色は殊更、SNSで話題に。その理由とは――。

発売1年で100万本を販売

昭和の時代は、「マス広告」で認知度を高めることで、長く愛され続ける商品、いわゆる「ロングセラー商品」が数多く登場しました。

「チキンラーメン」(日清食品)や「バーモントカレー」(ハウス食品)、「カローラ」(トヨタ自動車)、「霧ヶ峰」(三菱電機)などは、その代表ではないでしょうか。

一方、平成に入ると、SNSやマーケティング調査によって、時代の変化や消費者のナマの声をつかみ、改良を重ねることで人気を維持するブランドも登場しました。

象印の「ステンレスマグ」(写真提供=象印マホービン)
象印の「ステンレスマグ(SM-ZA型)」(写真提供=象印マホービン)

たとえば、「じゃがりこ」(カルビー)や「プチシリーズ」(ブルボン)、「ステップワゴン」(本田技研)など。

象印マホービン(以下・象印)の「ステンレスマグ」シリーズもその一つでしょう。

2010年夏の発売から、わずか1年で「1モデルだけで国内外売上100万本」という、驚異的な目標を達成しました。

いまも愛され続ける人気の裏には、ツイッター上でもきめ細かなフォローを心がける、社員たちの「ブランド愛」があるようです。

お化け商品が生まれた市場でさらに勝負をかける

「私たち(生活者)が本当に欲しい商品を作りたい」

2009年夏、「ステンレスマグ」の開発に着手した社内からは、そんな声が上がったといいます。

当時、マグの分野では「サーモス(Thermos)」(JMY-350/500)など、業界で「お化け商品」とも呼ばれる大ヒット商品が生まれ、隆盛を極めていました。

なぜ、ライバル商品は売れているのか。社内外でアンケート調査を行うと、評価されていたおもなポイントは、見た目の「色」や「質感」だと分かった。

このとき、象印の社内では、「負けずに自分たちも、色や質感をとことん追究したい」との思いが高まったといいます。