2)ストレスを受けることで支配性と攻撃性が発動する

ふたつめは「支配性と攻撃性」である。先述した「誤解されやすい4つの事項」でも少し触れたが、性犯罪とは、セクシャルな言動を通じて表現された他者への支配欲である。では、どうして支配したり攻撃したりしたくなるのか。分析にあたっては、もともとの攻撃的なパーソナリティーが関係していたり、過去に加害者自身が受けた被害体験への復讐的な意味合いを含んだ加害行動であったりすることもある。しかし、もっともわかりやすく、そして高い比重を占めているのは、もっと単純な「ストレス解消」であったり、自己の「劣等感や自己評価の低さの反動」であったりする。

これは子どものいじめの構造と類似している。うまくいかないことや不快な体験があったときに、自分よりも弱いものを攻撃してその状況を支配し優位性を実感することで、抑圧された不満や怒りの感情を発散する。これによって平素より感じている劣等感や自己評価の低さから一瞬だけでも目を背けられるからである。だからこそ、加害者は失敗しないように被害となる対象をよく選んでいるし、はじめから意図していなかったとしても、時に暴力的な手段にまで発展してしまうこともあるのである。

3)「今回で最後だから」と犯罪思考を自己擁護して実行

そして3つめの大切な要因は「依存の構造」である。

多くの性犯罪者は、犯罪行為を行う前に、自分がこれからやろうとしている行動の意味を理解しており、さらには「捕まったらどうしよう」というように行動の結果、何が起こりうるかということも想像できている。しかし、いったん犯罪行為のスイッチが入ってしまうと、行動を遂行する方向にしかベクトルが向きにくくなる。

すると次には、「これでもう終わりにする」とか「あと1回だけだから」などと事前に言い訳をすることで自身の思考や行動に合理性を与え、さらには「今回もうまくいく」「やめようと思えば自分はいつでもやめることができる」などと自分に言い聞かせ、犯罪思考を擁護する方向に自らを進めていく。その結果、この「あと1回だけ……」という誓いは永遠に繰り返されていくことになるのである。

【図表4】依存の構造
図表=筆者作成