新時代のリーダーは女性のほうが向いている!?
女性管理職が増えない要因は、社内体制が整っていない、リーダーのロールモデルが少ないなどにあるでしょう。しかし女性のみなさんにはチャンスが来たら積極的に昇進を受け入れてほしいと思います。子育てや介護など個人の事情もあると思いますが、時短やリモートでも成果が出せるようにデジタルツールの整備を会社に交渉してみるなど、やり方はあるはず。必ずしも男性と同じ方法でなくてもいいのです。後進のためにも女性リーダーは、自分が働きやすいように体制を改革していけばいいのではないでしょうか。
先述のファシリテーター型にもいえますが、近年の経営学の視点を統合すると、これからのリーダーには女性のほうが向いている可能性さえあるのです。ダイバーシティが進んだ組織の管理では、高い共感やコミュニケーションの能力が求められますが、女性のほうが男性よりもそうした能力が高いことが心理学的な研究データで証明されているからです。
例えばファシリテーター型上司が意識するといい新しいリーダーシップのひとつ、サーバントリーダーシップでは、部下を尊重して寄り添い、自己利益よりも部下の成長を優先するスタンスを取ります。傾聴や観察を心がけ、部下個人の成長を支援し、働きやすいコミュニティーづくりが期待されます。また精神性を重視し、求心力があるトランスフォーメーショナルリーダーシップでは、リーダーが組織の魅力を伝え、知的刺激を与えて啓蒙し、個別コーチングなどで部下個人を重視しつつビジョンを掲げてチーム全体のレベルを押し上げていく。
ほかにも部下を観察し、意思を重んじたうえで、心理的な取引や交換のように部下と向き合い、アメとムチを使いこなすトランザクショナルリーダーシップなどがあります。こうした新しいリーダーシップは、部下を尊重し、コミュニケーションを重視する点で共通しています。日本の企業でも多様性の高まりとともに、新しいリーダーシップへのニーズが高まりつつあります。やがて日本でも北欧のようにリーダーの過半が女性になる時代が来るといいですね。
早稲田大学大学院経営管理研究科教授
慶應義塾大学大学院修士課程修了後、三菱総合研究所へ入所。2008年米国ピッツバーグ大学経営大学院でPh.D.取得後、ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授に。13年より現職。専門は経営戦略論および国際経営論。『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)ほか、著書多数。