① 「一時金」で受け取る場合

「一時金」として受け取るとき、退職金やiDeCoは一括で受け取り、まとまったお金として扱われます。

一時金で受け取った場合は、退職所得として所得税・住民税の課税対象になります。退職所得は分離課税となり、他の所得とは区別して課税されます。このとき、所得税や住民税を大きく減らす「退職所得控除」という控除が利用できます。

退職所得と退職所得控除の計算は次の通りです。

退職所得=(退職一時金-退職所得控除)×2分の1

※勤続年数が5年以下の場合、退職所得が300万円超のときは2分の1を適用できない

【図表1】退職所得控除
出所=Money&You作成

※勤続年数・加入年数の年未満の端数は切り上げ

退職所得控除が退職金よりも多い場合には、税金はかかりません。また、退職金が退職所得控除より多い場合には、退職金から退職所得控除の金額を引き、さらに2分の1をかけた金額が退職所得となります。

退職所得に所定の税率をかけ、各控除額を差し引くことで所得税を算出します。住民税は10%を乗じた金額となります。

つまり、退職所得控除によって、退職金にかかる所得税や住民税を大きく減らすことができるのです。

退職日で非課税額が変わることも

注目したいのは、退職所得控除の「勤続年数・加入年数」。退職所得控除は、退職金の場合は勤続年数、iDeCoの場合は加入年数で計算します。退職金とiDeCoを同時にもらう場合は、長い年数が採用されます。

退職所得控除の金額は勤続年数・加入年数が長くなるほど多くなります。そして、20年以下か20年超かで退職所得控除の計算式が変わります。20年以下の場合は毎年40万円ずつ増加するのに対し、20年超の部分は毎年70万円ずつ増加するようになっています。

なお、勤続年数・加入年数の1年未満の端数は切り上げとなります。

ちょうど38年で退職した場合の退職所得控除は2060万円{800万円+70万円×(38年−20年)}ですが、38年と1日で退職した場合の退職所得控除は2130万円{800万円+70万円×(39年−20年)}となります。退職日が1日違うだけで非課税額が70万円変わるという情報は知っておいて損はないでしょう。

確定拠出年金に関連する書類
写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです

退職金もiDeCoも、一時金でもらう場合には社会保険料の負担は増えません。

退職後、国民健康保険に加入する場合も退職所得は除外して保険料を計算しますので、負担は増えません。