③「一時金&年金」で受け取る

60歳で退職金を一時金として受け取らないといけない場合で、さらに税金を減らすことはできないのか考えてみました。

60歳で退職金を一時金受け取り、60〜69歳の10年間でiDeCoを年金受け取り
公的年金
65歳から受け取らず70歳まで繰り下げ待機
退職金
退職所得:(2000万円-1500万円)×2分の1=250万円
所得税+住民税:34万7500円+25万円=59万7500円
iDeCo
毎年60万円(600万円÷10年)受取り
60〜64歳:60万円-60万円 となり非課税
65〜69歳:60万円-110万円 となり非課税
→納める税金の合計:59万7500円

60歳で退職金を一時金受け取りし、60歳〜69歳の10年間iDeCoを年金で毎年60万円ずつ受け取ります。この間、公的年金を受け取らずに70歳まで繰り下げ待機していれば、iDeCoの年金受け取りに対して公的年金等控除がフル活用できます。その結果、納める税金の合計は59万7500円になります。

公的年金等控除では、60歳〜64歳までは60万円、65歳以上は110万円まで非課税になります。

iDeCoを年金で受け取る場合には、まだ受け取っていない部分で運用ができます。仮に運用によって資産が増えたとしても、65歳から69歳までの間は年110万円までが非課税なので、この範囲で受け取れる可能性が高いでしょう。

iDeCoが先、退職金は5年後に

退職金とiDeCoは、受け取り方によって税金が大きく変わることを解説しました。iDeCoを先に受け取り、5年以上空けて退職金を受け取るのが手取り面で得となることが多いでしょう。公的年金の繰り下げ待機をしながら、iDeCoを年金で受け取ることも一つの手です。

なお、今回の試算は一例であり、実際には勤続年数、iDeCoの加入年数、退職金額、iDeCoの資産額などによって結果は変わってきますので、あくまで参考としてご自身の受け取り戦略を考えていただければと思います。

頼藤 太希(よりふじ・たいき)
マネーコンサルタント

株式会社Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年にMoney&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『Mocha(モカ)』、YouTubeチャンネル『Money&YouTV』、Podcast『マネラジ。』、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)など書籍90冊、著書累計150万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。