「新たな場」を用意することのハードルの高さ

これを聞いて、少し意外に思う人も多いのではないでしょうか。

ネスレ日本といえば、毎年、全社員を対象に、「イノベーションアワード」という新規事業コンテストを開催することで有名。また、家庭用のコーヒーメーカー(「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」)をオフィスに無料で貸し出すことで、コーヒーを軸としたコミュニケーションハブの創造を目指す「ネスカフェ アンバサダー」という、画期的なイノベーションを生み出したことでも知られます。

つまりネスレ日本には、以前から“前例がない”ことにも前向きに挑戦する企業風土があったはず。それでも新たな場を用意するとなると、さすがにハードルが高かった……。

期間限定で「まずはやってみる」ことの重要性を訴えた

そこで髙岡さんは、「常設でなくてもいい、期間限定でも「まずはやってみる」ことで、必ず得られるものがあるはずだ、と説得しました」とのこと。

17年3月、東京・原宿に初めて「睡眠カフェ」がオープンすると、たちまちテレビの情報番組やSNSなどで話題に。開店前から行列ができ、まずは20、30代女性を中心に、認知度が高まりました。

良質な睡眠について学べる「ネスカフェ 睡眠カフェ in 原宿」(写真提供=ネスレ日本)
良質な睡眠について学べる「ネスカフェ 睡眠カフェ in 原宿」(写真提供=ネスレ日本)

その後も、異なるパートナーと少しずつ試みを変え、東京・銀座で2回、期間限定で新たな空間や飲み方を提案。19年3月には大井町に、念願の常設店をオープンしました。その店舗を、21年3月に再び原宿へと移し、ネスカフェ 原宿と同じビル内(3階)に「ネスカフェ 睡眠カフェ in 原宿」を設けたのです。

髙岡さんの挑戦は止みません。22年6月、JR東日本とともに新たに開業したのが「STATION BOOTH(ステーションブース) supported by ネスカフェ 睡眠カフェ(以下、「ネスカフェ ブース」)」(22年12月31日までの予定)。埼玉のJR大宮駅構内で、「仕事をしたりコーヒーを飲んだりしながら、リラックスタイムを過ごせる」という、画期的なスペースです。

「まさかJR(東日本)さんとご一緒できるとは思わなかった。大宮駅はターミナル駅で、主婦やシニアの方々、学生さんなども多く利用する。ですが、ぜひふだん忙しいビジネスパーソンの方々にこそ、体験していただきたいのです」と髙岡さん。