「あれ? いまの質問ってなんだったっけ……?」

相手は、答えを出すまでのあいだ、ずっと質問を覚えているとは限りません。

安斎勇樹『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
安斎勇樹『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

事前に注意を引いたつもりでも、質問を聞き漏らした人がいるかもしれませんし、聞いていたけれど、悩んでいるうちに頭から抜けてしまった人がいるかもしれません。

アイデアを発散するタイプのミーティングで、話し合いが盛り上がっていればいるほど、話題があちこち行ったり来たりして、気がつくと質問の本筋から少しずれたところで盛り上がっていた、なんてことも少なくありません。

私自身も、質問された瞬間には耳を傾けていたのだけれど、質問について考えているうちに思考が活性化して別のことを想像してしまい、思考が脱線した結果、「あれ? いま聞かれていた質問ってなんだったっけ……?」と飛んでしまうことがたまにあります。

クエスチョンマーク
写真=iStock.com/Dzyuba
※写真はイメージです

相手が質問から脱線しないように支援する

これらのケースに共通して有効な解決策として、「質問をリマインドする」足場かけが有効です。要するに、投げかけた質問を改めてもう一度投げかけたり、見えるところに提示したりすることで、相手が質問から脱線しないように支援するのです。

改めてもう一度投げかけてリマインドする場合には、最初に投げかけた質問に補足を付け加えることができるため、その他の「前提を補足する」「意義を補足する」などの足場かけと併用してもよいでしょう。

質問から脱線させない一番手っ取り早い支援は、質問を見えるところに提示することです。問いかけた後に、ミーティングルームのホワイトボードに書き留めておく、スライド資料に記載して投影する、オンライン会議ツールのチャット欄に投稿しておく、など、ふとしたときに質問が視界に入るようにしておくことで、脱線を防ぐことができるでしょう。

安斎 勇樹(あんざい・ゆうき)
MIMIGURI代表Co-CEO、東京大学大学院情報学環特任助教

1985年生まれ。東京都出身。私立武蔵高校、東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。ウェブメディア「CULTIBASE」編集長。企業経営と研究活動を往復しながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について探究している。主な著書に『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』、『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』などがある。