なぜ「結局は運動も必要」なのか

Q 池谷先生は、なんでエクササイズをすすめるの?
A 「使う」と「貯める」、ダブル効果があるからです!

「運動は好きじゃありません」
「時間ありません」
「ひざが痛くて、運動どころじゃありません」

「体を動かしましょう」と言ったとき、「はい!」とうれしそうにおっしゃる患者さんはそういません。ほとんどの患者さんは、なかばうんざりしながらこうした「できない理由」を訴え、「運動、しないとダメですか?」と確認されます。

でも、体を動かすことはやっぱり大切なのです。

まず、血糖値が上がるのは、食事でとった糖質がブドウ糖として血管内に吸収されるからでした。では、なぜ私たちが糖質をとるのかといえば、「おいしいから」という理由もありますが、一番は大事なエネルギー源だからです。

私たちは、体内にさまざまな形で貯えているブドウ糖をエネルギー源として使いながら、体を動かしています。

逆に言えば、体を動かすと、ブドウ糖はエネルギー源として消費されるのです。

そうすると、血糖値も下がります。ごくシンプルな理屈です。

これが、エクササイズが欠かせない第一の理由です。

ただ痩せればいいわけではない

また、内臓脂肪を減らし、インスリンがしっかり効く体をつくるには、筋肉が必要不可欠です。

池谷敏郎『血糖値はたった1分の習慣で下がる!』(秀和システム)
池谷敏郎『血糖値はたった1分の習慣で下がる!』(秀和システム)

血液中に余った糖をまず取り込んでくれるのが、肝臓と、全身の筋肉です。

筋肉は、エネルギーの貯蔵庫。筋肉がしっかりついている人ほど、糖の“しまい場所”がたくさんあるということです。血液中に余った糖を速やかに取り込めるので、血糖値が上がりにくいわけです。

また、すでに少し触れましたが、肝臓や全身の筋肉などが血液中に余った糖を取り込むわけですが、それでも余った糖が、中性脂肪に作り替えられて脂肪細胞へと貯えられていきます。ということは、筋肉という“糖の倉庫”が小さい人ほど、中性脂肪に作り替えられやすいということです。

最近、モデルさんのように細い、やせ型の女性にも、糖の代謝が悪くなっている人が多いことが分かってきました。

そうした人は、食事の量も少ないのですが、運動量も筋肉量も少なく、太っている人と同じようにインスリンの効きが悪くなっていることが多いのです。

「スリムですね」は、ほめ言葉として使われますが、もしも筋肉がなくて細い状態だったら、要注意です。喜んでいる場合ではありません。

池谷 敏郎(いけたに・としろう)
池谷医院院長、医学博士

1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとしてメディアにも多数出演している。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。