アメリカと中国の決定的な違いは“オープン”かどうか
つまり「中国式の民主主義」とは、中国共産党がすべてを決める体制のことなのです。この会談で中国は、「民主主義についてアメリカから説教されたくない」と反発したわけですが、その背景にはアメリカが抱えている問題があるでしょう。
アメリカは黒人差別の問題を抱えています。中国からすれば、そんなアメリカが「他人の国の中の問題に注文をつけるな」というでしょう。
新疆ウイグル自治区の問題は、確かに中国の国内の問題だともいえます。問題は中国共産党が「共産党の言うことを聞かない」人を強制収容所に入れたり、ウイグル人に「子どもを産ませないようにしている」と言われたりしていることです。
これらが本当なら重大な人権問題といえます。中国国内の問題であっても、口を出すのは当然です。中国は「そんなことはない」と反論していますが、確認できません。海外のメディアは自由に取材できないので実態がわからないのです。私たちは、すべてを見なければ、信頼できません。
ここにアメリカと中国の大きな違いがあります。アメリカにも人権問題がありますが、外国のメディアにも自由に取材させています。隠そうとはしていません。しかし、中国が隠そうとしているのは明らかです。
「中国式の民主主義」には香港や台湾も含まれる
中国共産党がいう「中国式の民主主義」は、前述のように中国共産党の指示や命令に従うことを意味しているわけですが、そこには香港や台湾も含まれます。
香港は中国国内の一地方なので、共産党に従うことは当然です。また、中国にすれば台湾も中国の一部です。アメリカは中国の動きを牽制するため、台湾に武器を輸出していますから、中国が台湾を武力で統一することが困難になりつつあります。それもあって“口を出すな”と言っているのです。
私たちにとって民主主義とは、「問題をオープンに議論できる政治の仕組み」のことを意味します。これは中国と大きく異なります。
1950年長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHK入局。報道記者として事件、災害、教育問題を担当し、94年から「週刊こどもニュース」で活躍。2005年からフリーになり、テレビ出演や書籍執筆など幅広く活躍。現在、名城大学教授・東京工業大学特命教授など。6大学で教える。『池上彰のやさしい経済学』『池上彰の18歳からの教養講座』『これが日本の正体! 池上彰への42の質問』『新聞は考える武器になる 池上流新聞の読み方』『池上彰のこれからの小学生に必要な教養』など著書多数。