貪欲なフィンランドの女性たち

フィンランドでは出産や子育てで一時的にキャリアを中断することはあっても、女性が定年まで働くことは当たり前になっている。子どもが生まれるからといって、仕事をやめるとか、ずっと主婦でいようという人はほとんどいない。自営業や農家であっても、女性の仕事はれっきとした報酬を伴う労働とみなされる。

そんなフィンランドの女性を見ていて思うのは、とにかく「貪欲」だということだ。「仕事か家庭か」という二者択一ではなく、「仕事も家庭も趣味も勉強も」と自分の興味や欲求を貪欲に追い求める。それは何も女性に限ったことではなく、フィンランド人全体に言えることではあるのだが、このいい意味での貪欲さは特に女性に顕著だと感じる。

以前、ある日本の視察団がフィンランドの女性グループに女性活躍へのアドバイスを聞いたところ「与えられたチャンスは自信がなくとも、とりあえずやってみること」との答えが返ってきたそうだ。どうしても日本の女性は、完璧にできる自信がないと一歩前に踏み出すことをためらう傾向があるように見えるが、「私はいいです」と遠慮してしまうのではなく、「やってみたい!」と上昇志向を持って失敗を恐れずやってみることが大切で、努力は無駄にはならないし、ダメなら戻ればいい――とその人は説明したという。他にも、仕事をしながら自分の能力を高め、仕事の幅を広げるために学びに積極的に取り組み、もし家庭のパートナーが協力的でなければ、別れて新しい相手を見つけなさい、とのアドバイスもあったそうだ。

男性はどう思っているのか

こういう話をしていると、「男性はどう思っているのか、本当にそれで男性は満足なのか」と日本の方から聞かれることがある。私の見る限り、フィンランドでは「女性が稼いで頑張ってくれる方が、僕の負担が少なくなって楽」「お互い仕事もフルでしているから、家のことも2人で同じぐらいに分け合いたい」と語る男性が目立つ。

また、フィンランド人は高校を卒業すると、どんなに大学が家から近くとも、自立してひとり暮らしやパートナーとの同棲を経験する。当然、家事の経験もするので、多少の好き嫌いはあっても、家事が全くできない、という男性はほとんどいない。それに今の20~30代は共働きの親を見て育ってきているので、協力し合って生活することに違和感を持っていないように見える。むしろ何もしない男性はダメな男性のレッテルを貼られてしまうし、女性も男性に養ってもらうことを期待する様子はない。