子どもが変化する可能性を信じる

親の切実な気持ちを子どもに伝えるときに大切なポイントは、親が子どもに対して「開く」ということです。

伊藤さん
撮影=水野真澄

ここで言う「開く」とは、親自身が「子どもが変化する可能性を信じる」ことです。その可能性を信じられると、親は子どものために変われるし、それによって子どもがついてきてくれるかもしれない。

実は座禅にも、そういった作用があります。足を組んで、上体の姿勢を整えて、大きく深呼吸をすると、呼吸を通じて、頭と体がつながることができる。今まで頭だけで考えていたことが、呼吸をすることで全身一つになれます。

その中で、なぜか心臓だけが動いている。それは小宇宙のような、どこか神秘性があります。そういった神秘性を実感できると、当たり前に見えているものに対して、自分の心を開いて別の可能性を信じることに意識が向く。座禅はそれを積み重ねていくことなのです。

子どもには本気で愛情を伝え続ける

自分を開くというのは、覚悟のいることです。まして自分の子どもという、本当に近い存在に対しては、並大抵の開き方では足りません。だからこそ「本気で謝る」「本気で感謝する」ことが必要になります。

庭園の自然
撮影=水野真澄

私自身、子どもに対しては常々「生まれてきてくれてありがとう」という言葉を口にするようにしています。今はまだ小さいので、ハグしながら「かわいいね」「ありがとう」と言っていますが、成長して距離感が変わっても、その気持ちは伝えつづけたいと思っています。

親から子に対する愛情というのは、当たり前に伝わっていると思うのは、甘い見積もりです。愛は、表現しつづけないと伝わりません。

たとえば1年前にたくさん表現しても、表現し続けなければ、子どもは冷めたんじゃないのと不安にもなるし、疑心暗鬼にもなります。やはり、そのつど愛情表現はしたほうがいい。これは親子関係だけでなく、夫婦や恋人同士でも同じだと思います。