片付けの習慣化をサポートするHomeportの西崎彩智さんは、24歳で結婚してから20年間、専業主婦だった。離婚後に起業し、片付けの指導をする中で見えてきたキャリア女性たちの危機的状況とは――。

ヨガができないヨガスタジオ店長

二人の子どもを連れて、離婚に踏み切ったのは46歳の時。ヨガスタジオの店長として働いていた西崎さんは、たまたま目にしたフリーペーパーで「起業塾」を知った。どこかうさんくさいと思いながらも気になってならず、一度はゴミ箱へ捨てたもののまた拾いあげた。「やっぱり気になるから行ってみよう!」と思い、さっそく説明会へ――。

Homeport 代表 西崎彩智さん
撮影=市来朋久
Homeport 代表 西崎彩智さん

「自分を売り込むためにいちばん大事なことは何か。まずは自分の生き方をきちっと見直さないと、人にモノは売れないのだと教えられ、なるほどと腑に落ちたのです」

専業主婦歴20年、ヨガスタジオの仕事もヨガができるから入ったわけでもなかった。それでも受付で接客するのは好きで、主婦の悩みや子育てなどの相談に乗るのは得意だった。自分にできることは「コーチング」かもしれないと考え、職場の人に相談すると、心配して「コーチングなんかで子どもを育てられるわけないじゃないか」とたちまち反対された。

覚悟を決めるために買った赤い日産ジューク

その後、スタッフと話していたとき、西崎さんは「私、本当にここで人生一新したいんだよね」とふと漏らした。なぜかそこで頭に浮かんだのが、家に残っていた元夫の車。

「あの車が嫌いだからどうにかしたいと思い、お金が貯まったら買い替えるつもりでした。だけど先に車を買ったら起業もがんばるしかないから、覚悟を決めるために『買いに行こう!』と。その足で日産のショールームへ行ったんですよね。今思えば、バカだなあと……(笑)」

日産の赤い「ジューク」が欲しくて、ずっとネットで中古車などを見ていた。平日の昼間、誰もいない販売店を訪れると、店員が丁寧に応対してくれる。希望の車種を伝えて探してもらうと10分後に「ありました」と言われ、「これ買います!」と即決。店長に金額も掛け合ってくれた。さすがにシングルマザーなのでローンにした方が良いのではと勧められ、その場で新車を手に入れたのだ。