メンタル・アカウンティングから逃れる方法

では、どうすればこうしたメンタルアカウンティングから逃れることができるのかを考えてみましょう。

まずは収入と支出に分けた場合、収入は「これはどこから入ってきたお金」といった具合に区別せず、トータルで一つの財布に入れてしまうことです。どこからお金が入ったのかを区別してしまうと使いやすいお金と使いづらいお金に分かれてしまいます。でも本当に大事なのは使いやすいか使いにくいかではなく、それを使うことが必要かどうかを判断することです。したがって入ってくるお金はいったんトータルな金額でまとめてしまってフラットに判断できるようにすることが大事です。

ところが支出の場合はその逆です。メンタル・アカウンティングというのは自分でも知らないうちに仕訳してお金を使ってしまうわけですから、それを防ぐには、自分の心が勝手に会計勘定を作ってしまう前に自分で「勘定」を作ることです。

例えば、FPの人がよく言いますが、たとえば食費など、支出の項目毎の予算を決めておき、その枠は決してオーバーしないようにする半面、枠内であれば気にせずに使っても良い、といったルールを作っておくことです。これによって少なくとも意図せざる形で野放図な出費を抑えることには一定の効果があると思います。

さらに言えば、支出に関しては代替手段がないかということを見極めることが大事だと思います。自動車ローンの例にしても医療保険の例にしても、そのほかの手段を使った場合にどうなるのか? を冷静に考えてみることが必要でしょう。「これしかない」のではなく「他に方法はないか」を考えることも「知らない間にメンタル・アカウンティングに陥ってしまう」ことを防げるのではないでしょうか。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

1952年大阪府生まれ。オフィス・リベルタス創業者。大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年まで勤務し、2012年に独立後は、「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプランニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行った。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。著書に『投資賢者の心理学』(日経ビジネス人文庫)、『定年男子 定年女子』(共著・日経BP)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)、『お金の賢い減らし方』(光文社新書)など多数。2024年1月没。