苦手な相手であっても敬う心を持つ
考えてもみてください。この広い地球の、まったく異なる場所で生まれ、違う環境で育った人間同士が、2022年のある日のこの時間、同じ場所に集っている。もうそれだけで、奇跡的な確率の奇遇な出会いだと思うのです。
さらにいえば、そこに居合わせた人が交わした会話は、この地球の歴史の中で、もう二度と繰り返されることはないわけです。
自分にとっても、相手にとっても、貴重なこの一瞬を共有しているという意識が出てくれば、そこには互いを敬う気持ちが生まれるのが自然です。
たとえ相手に苦手意識があっても、それはその人の一面に過ぎません。その一面をもってその人全体を判断するのは、誰にもいい影響をもたらしません。
私の苦手な◯◯さん、ではなく、この一瞬を共有する貴重な相手ととらえてみると、心が軽くなるのを感じます。
二度と戻らない時間をいいものにしよう
この時間が早く過ぎ去るようにと願うのではなく、二度と戻らないこの時間を少しでもいいものにしようと思えば、自分の態度が変わります。
ここにいるみんなが、それぞれに貴重な時間を持ち寄っていると考えれば、相手をリスペクトする気持ちが生まれます。
今いる場所に、ポジティブなマインドを持ち込みましょう。あなたのその前向きな姿勢にほかの人の共感が重なると、そこにハーモニーが生まれます。美しい旋律が耳に心地いいように、その空間を満たすハーモニーがプラスのエネルギーを持てば持つほど、部屋全体が清々しい空気に包まれていきます。満たされた時間を共有した人たちの心は清く温かく、誰かを咎めたり排除しようとしたりといった気持ちも起こらないことでしょう。ここには、茶の湯の精神である和敬清寂に重なるところがあるでしょう。
その場所が会議室であろうと、オフィス、電車の車内、タクシーの中、どこであっても、自分はハーモニーを奏でる一人なのだと思うと、それだけで、所作に変化が生じることでしょう。
ベストセラー『般若心経入門』の著者で名僧の松原泰道を祖父に持つ。コーネル大学でアジア研究学の修士号、宗教学博士号を取得後、カリフォルニア大学バークレー校仏教学研究所、スタンフォード大学HO仏教学研究所を経て、現在に至る。グーグル本社で禅や茶道の講義をするなど、マインドフルネス界からも注目を集めている。アメリカと日本を行き来しながら、禅とマインドフルネスの橋渡し的存在として、国籍や人種、宗教を問わず人々の「心の救済」にあたっている。