日本は自前のプラットフォームをつくれるか

【堤】ちなみにGAFAはこのフリーダム・コンボイに関して、徹底して情報統制をしました。

堤未果『デジタル・ファシズム』(NHK出版新書)
堤未果『デジタル・ファシズム』(NHK出版新書)

コンボイ側がYouTubeにアップした動画も、片っ端から消去していった。それでも抗議者たちは、GAFA以外のプラットフォームを使って発信を続けています。

デジタルという手法がまだ普及し切る前の今だからこそ、できた事例ともいえるでしょう。

【斎藤】ただ日本の状況を考えたときに、難しいのは、やはり規模感ですよね。現在、積極的にGAFAMに規制をかけようとしているEUは、経済圏も大きく、各国が足並みをそろえ、大きな対抗勢力となっています。

中国もやはり10億人市場だから、自分たち独自のプラットフォームを作れる。しかし、人口1億人という小規模市場の日本が、どれだけGAFAMに代わる自前のプラットフォームを作れるかというと、かなり厳しい。

【堤】国民の発信媒体に関してはGAFAM以外の検索エンジンなどまだ選択肢はありますが、デジタル庁など行政サービスに関しては、利便性やスピードより「セキュリティー」が最優先されるべき部門なので話が違いますね。

全国民のデータを扱う省庁なのに、機能や利便性で追いつこうとするあまり、「デジタル安全保障」という意識が薄いのではと思わずにいられません。

今後社会のあらゆる面がスマート化する中で、国産が遅れてるから手っ取り早く外国企業に委託、ITに強い外国人を民間から採用しましょうという、今までのような「外注思考」を、国家と国民の重要データを扱う公共部門に入れることの意味を、よく考える必要があります。食とエネルギーを外国に依存している国に、コロナやウクライナ有事で一体何が起きたでしょう?

世界はすでにデジタル植民地の時代に突入しています。今の日本には、デジタル時代の安全保障の重要性を理解し、サーバー主権について徹底的に議論し、外資に委託する際の有事リスクへのセキュリティー対策や、国民に対する透明性の確保、そしてたとえ時間がかかっても国の重要インフラには、人と技術に投資すべきだと考える政治家が必要でしょう。

「自由」はどこまで残せるか?

【斎藤】アメリカはそれで儲けることができるけれども、GAFAMをいくら導入しても日本経済は豊かになりません。広告料や利用料もどんどん吸い上げられて貧しくなっていきます。

斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書)
斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書)

【堤】ええ、そうやってサービスと引き換えに無料で提供している個人データが実は巨大な資産であることを、私たち国民もしっかり意識しなければなりません。

Microsoft Teams、Google Meet、Zoom、LINE……、日本の教育界や経済界、医療現場や福祉現場、政府や自治体で、安易に使われている海外系サービスが吸い上げた国民の個人情報が、今後どう扱われるかが重要であること、あのデータはあなたたちの大事な権利なのだと、今のうちに子供たちに教えておかなければなりません。

日本でも今後私たち国民の金融情報、個人情報、健康情報、知能情報などが一元化されてマイナンバーカードに組み込まれていきます。そうなったとき、果たして国民にどの程度の「自由」が残されているのか? ラッキーなことに、世界を見回せばすでにいくつもの国が似たような制度を導入していますから、今のうちに彼らの失敗例と成功例をみて日本は上手に良いとこどりをしてゆけばいいのです。