50代は子宮体がんの好発年齢。オプション検査で見逃し減に

女性が気をつけたいがんには、子宮体がんや卵巣がんもある。どちらも有効とされる検診法はないというが、子宮頸がん検診を受けるときに経腟超音波検査を併せることがおすすめだそう。

「一般的な子宮頸がん検診に経腟超音波検査は含まれません。実際、人間ドックで毎年子宮頸がん検診を受けていた女性がステージ4の子宮体がんだった例もありました。経腟超音波検査を行うと、小さな子宮筋腫やポリープ、卵巣の腫れの有無や、子宮内膜の厚みがわかり、子宮体がんや卵巣がんの兆候を見つけやすくなります。

子宮体がんは閉経前後から増え始め、早期に不正出血が見られるので異常を感じたらすぐに子宮体がん検査を受けることが大切。卵巣がんについては、子宮内膜症からがんに進展するケースが多いため、子宮内膜症を罹患している人は定期的にフォローしていくことも必要です。子宮体がんも卵巣がんも検診費用はオプションのため自費にはなりますが、子宮頸がん検診の際に経膣超音波検査を一緒に受けておくことをおすすめします。

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また、早期発見につなげるには、家族歴も重要な情報です。大腸がんと子宮体がんを引き起こす共通遺伝子変異のリンチ症候群や、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)などの遺伝性のがんがあります。近親者にこれらのがん患者が多い場合は、人間ドックを受ける前に医師に相談を。父母だけでなく、伯叔父母、祖父母まで確認しておくといいでしょう」

話題の線虫がん検査の気になる精度は

がん検診以外にも、佐々木医師が勧める女性が受けておくべき検査は以下のとおり。

●脳ドック
頻繁に頭痛がある人、血圧の高い人、近親者に脳出血を患った人がいれば一度受けておくと安心。

●骨密度検診
閉経を迎えたら必ず検査を受けること。大腿だいたい骨と背骨の骨密度を測定するDXA(デキサ)法で正確な数値を計測することが大切。

また、最近では病気のリスクを自宅で簡単に調べられるさまざまなキットも多数発表されている。特に尿1滴で全身15種のがんのスクリーニングができ、がんの早期発見を導くと注目される線虫がん検査の精度はどうなのだろうか。

「線虫がん検診で“リスクが高い”と判定された人の中で、実際にがんが見つかる人は10人に1人程度であることを知っておく必要があります。過度に心配しすぎず、人間ドックや検診を受けるきっかけになればいい。逆に、“リスクが低い”と判定されれば、15種類のがんについてはひとまず安心だと考えることができます。ただし、低リスクだからと、検診を受けなくてもいいわけではありませんので、結果を過信しすぎないことも重要です。

現状ではがんの部位を特定することはできませんが、膵臓すいぞうがんを嗅ぎ分ける遺伝子操作をした線虫による治験がオーストラリアで開始されています。今後期待できる検査であることは間違いないでしょう」

何より大切なのは、「大丈夫」と後回しにせずに定期的にがん検診を受けること。また、受診する機関において必要十分な検査内容が網羅されているかをしっかり確認することも必要だろう。異常が発見されたら必ず専門機関で2次検診を受けて、早期治療につなげる意識と努力が重要だ。

構成=中島夕子

佐々木 寛(ささき・ひろし)
産婦人科専門医

産婦人科専門医/婦人科腫瘍専門医/細胞診専門医。日本婦人科がん検診学会理事長/千葉徳州会病院婦人科部長であり、元東京慈恵医科大学教授。