バトルが絶えない「2段階職場」とは

個人レベルばかりでなく、組織レベルでも「余裕がない」状態に入ると、メンバー間のイライラ、怒りが多発し、バトルが起きやすくなります。

私は、様々な要因によってメンバーの3分の1が疲労の2段階にあると、組織の力は急激に低下すると思っています。疲労の2段階とは、同じ作業でも2倍の疲労を感じ、回復にも2倍の時間がかかる、感情も敏感になり、いつもより2倍傷つきやすくなる状態です。その状態にある職場を「2段階職場」と呼んでいます。

その特徴的な雰囲気は次のようなものです。

・挨拶が暗い、笑いが減る、愚痴が増える
・残業が多くなる、ところどころで仕事が溜まる、遅くなる
・言った、言わないなどのトラブルが増える
・仕事上のミスが増える、ミスへの当たりが強くなる
・仕事を押し付けあう、手伝わない、いちいち意義を求める
・不公平感に過敏
・少しの変更に対応できない、予定を知りたがる・小まめな「ホウレンソウ」ができなくなる、嘘が多くなる
・人間関係のトラブルが多くなる、他人の悪口が増える
・部内派閥ができる、他部署との対立が多くなる
・パワハラ、セクハラ、いじめ等のトラブルが増える
・リーダーへの期待(不満)が高まる

疲労が生み出す「あの人が悪い」…スケープゴートが生まれる理由

2段階職場で最も特徴的なのが、「人間関係の悪化」です。

組織内の人間関係トラブルは、組織が普通の状態でも起こります。先に触れた通り、職場は、「怒りの多発地帯」。また人は「他人に勝ちたい」のが本能。出世をかけた競争が激しくなれば、他者に対する妬みなども生じやすいでしょう。さらに、個人だけでなく、出世をかけて派閥が対立するのも、ありがちな人間の姿ではあります。

しかし、経営の悪化、多忙、人材不足、不祥事、将来性がないなどで、2段階職場となった現場では、必要以上に人間関係がギスギスして、トラブルが顕在化します。

こうなると、「調子が悪いと原因究明をしたがる」ことの1つで、「あの人が悪い」と組織内における「スケープゴート」も生まれやすくなってしまいます。

同僚から一斉に指さされ非難される女性
写真=iStock.com/PeopleImages
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疲労の2段階により、多くの人が理由もなくイライラしている状態の中で、共通の攻撃対象が一人いれば、少なくともその間は、怒りの矛先が自分には向かってこないことを意味します。生き残るために、人はスケープゴートを仕立てあげることで、自分自身を防御しようとするのです。「いじめ」が起きたとき、見て見ぬふりをしてしまう構造と同じです。逆に言えば、組織が健全で強いときは、スケープゴートは生じません。