いじめやトラブルに遭っているなら「退職」したっていい!
もしあなたが勤めている職場で「スケープゴート」やいじめなど、怒りによるトラブルが起きていて、上司も何もせず、とても健全とは言い難い状態ならば、自分自身の進退をどのように考えたらいいでしょうか。そういう現場にいると、被害者や傍観者であっても、自分の中に「怒り」が発動します。そして怒りは、自分自身をむしばみ始めます。
怒りへの対処プロセス①は、「刺激から離れる」です。もし、社会情勢や業界の構造上、会社の状況が改善しないのが自明であれば、退社を検討したほうがいいでしょう。
しかし職場を辞める決断をするか、しないか、見極めは大変難しいものがありますし、人それぞれの人生により、様々な要素が関わり合います。
仕事の負担に対して、自分の報酬がどうなっているか、というバランスが、職場においてはとても大切です。しかし、人にとって「報酬」とは、単に給料や収入面などお金のことだけではありません。社会的なステータスや、大切な人間関係、やりがい、充実感、あるいは将来性なども含みます。待遇面がどんなに良くても、多くの人はそれだけでは働き続けられません。精神的な充足感が得られない仕事は、やがて負担感だけになります。
これを機に、自分の大切にしているものをきちんと洗い出してみましょう。
また、知っておいてほしいのは、もし本人がすでに疲労の3段階、つまり「うつ状態」になっていると、そう簡単には辞められなくなる、というメカニズムです。
疲れ切った状態では、「今の継続を捨てる」という行動も、大変なエネルギーを要するからです。現在勤めている会社がブラック企業で、本人はそのせいで疲れているのに、当の本人が辞めたがらないというケースはとても多いのです。
「退却する」という選択は、元気な状態でないと決断できないこと。今の時点で、職場が自分自身を消耗させていると思うならば、自分自身のエネルギーが本当に枯渇してしまう前に、早め早めに「離れる」選択肢を考えたほうがいいでしょう。
もうすでに、自分では決められない状態に陥ってしまっている場合は、ぜひまだ健全な方に相談してみてください。
MR(メンタル・レスキュー)協会理事長、同シニアインストラクター。1959年、鹿児島県生まれ。防衛大学卒業後、陸上自衛隊入隊。1996年より陸上自衛隊初の心理教官として多くのカウンセリングを手がける。自衛隊の衛生隊員(医師、看護師、救急救命士等)やレンジャー隊員等に、メンタルケア、自殺予防、コンバットストレス(惨事ストレス)コントロールについての指導、教育を行なう。2015年に退官し、現在は講演や研修、著作活動を通して独自のカウンセリング技術の普及に努めている。著書に『寛容力のコツ』(三笠書房《知的生きかた文庫》)、『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』(朝日新書)、『「気にしすぎて疲れる」がなくなる本』(清流出版)など多数。