顧客と連携するマーケティング手法

コロナ禍でより重視されるようになった、コミュニティマーケティング。

SNSが広く普及した10年以降は、消費者の貢献欲求の高まりなども受け、それまでの「インフルエンサー」主体のマーケティングから、顧客一人ひとりと連携して地道にブランドを育てる視点が重視され始めました。

以前、「『もう白物家電じゃない』日立が冷蔵庫の10色展開に踏み切った深い理由」でお伝えした「共創(協創)」の概念も、その一つ。

代表的なのは、アウトドア関連のメーカーの「スノーピーク」や、デンマークの玩具メーカー「レゴ®」などの取り組みでしょう。

スノーピークは98年以降、コツコツとキャンプイベントを開催し続け、熱心なファンやポイントカード会員が既に30万人を超えているとされます。

また、レゴグループは08年、「空想生活(現:Cuusoo System)」との共同企画として、Webサイト「LEGO IDEAS」を開設。世界中のレゴファンから製品化したいオリジナルデザインを募集し、企業とファンが海を越えてつながる仕組みを確立しました。

顧客の退会を防ぐすごい仕組み

一般に、SNSなどを通じたコミュニティマーケティングの利点を「『企業対顧客』の関係性が深まること」と捉える傾向も強いのですが、実はそれ以上に大きいとも言われるのが、顧客同士、あるいは企業内のスタッフ同士のつながりの強化です。

ソエルの取り組みも、まさにそのお手本でしょう。

オンラインで指導するインストラクターは、便利な反面、ややもすると“孤独(孤立)”を感じやすい。また、赤ちゃんを抱えてレッスンを受けるママたちは、子どもが泣きだした瞬間、「ああ」とため息をつくかもしれません。

そんなとき、SNSを通じてスタッフ同士、あるいは顧客同士がつながっていれば、互いに励まし合ったり、フォローし合ったりできる。顧客の退会も防げるでしょう。

オンラインビジネスの世界でも、地道ながらこうした“ココロ”のつながりも含めてサポートできるか否かが、生き残りの鍵を握るのではないでしょうか。

牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)
マーケティングライター、世代・トレンド評論家、インフィニティ代表

立教大学大学院(MBA)客員教授。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』(ともに日本経済新聞出版社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)、『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)ほか多数。これらを機に数々の流行語を広める。NHK総合『サタデーウオッチ9』ほか、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。