仏様は有事の時に人の本心を見せてくれる

Aさんが、苦しくても離婚しない理由はほかにもありました。結婚式を挙げた時、地元の友達や親戚からは、「かっこよくて素敵な人と結婚して本当によかったね。しかも経営者なんでしょう。玉の輿だね」と、うらやましがられるほどだったので、今さら離婚して地元に戻ることは屈辱だというのです。

「人目を気にすること」と「自分を傷つける人と離れること」を比べたとき、どちらが間引いて断捨離すべきもので、どちらが残して育てるべきものでしょうか。

自分が思っているほど、まわりの人はあなたのことを気にしていないものです。それにもし、離婚して地元に戻ったとしても「あ~あ、失敗して帰って来ちゃったんだ。かっこわるいね」なんていう人がいたら、それはもとから本当の友達ではなかっただけのことです。

仏様は、有事にこそ人の本質を見せてくれます。それは私が僧侶だから見えるのではなく、皆さんの周りにいる仏様やご先祖さまが見せてくれるのです。仏様やご先祖さまが教えてくださった、あなたの人生に害をなす人を、無理して繋ぎ留めておく必要はないのではないでしょうか。

Aさんは今もまだ、夫と別れるかどうか悩んでいます。ただ、もう「死にたい」とは言わなくなりました。私にできることは、悩みの中にいる人の手をひいて、溺れないところまで上がってくる手助けをすることだけです。

一度きりの人生を泣いて暮らすのではなく、楽しく、一隅を照らすように過ごしてほしいと思っています。