「死んだらどうなるか」のシミュレーション
そこで私は、「そんなに言うのなら、あなたが死んだらどうなるか、一緒にシミュレーションしてみる?」と提案しました。ちょっと残酷なシミュレーションかもしれませんが、簡単に「死」を口にする人と、死についてきちんと話しあうことは大きな意味があると思ったからです。もちろん相手の様子を慎重にうかがいながらの判断になります。
「あなたが死んだ後はどうなるの?」と聞くと、「お葬式」だと言います。私は「甘い」と言いました。
「自殺したご遺体の後片付けはとても大変だけど、それを誰かにやってもらうの? 自分のなきがらを親に見せるの?」と聞くと、Aさんはハッとした様子で「いやだ」と言います。こうしたやりとりを重ねるうちに、Aさんの表情も変わってきました。「だったら天寿を全うして、『ありがとう』と言って死のうよ」と伝えました。
そして「じゃあ、死ぬのはやめようか」と言うと、ようやく笑ってくれました。
やりとりは6~7時間に及びました。時間をかけてじっくり話し、死にとらわれていた心が解放され、フラットな状態になったところでようやく、夫との関係をどうしていくか、一緒に考えることにしました。
あなたを傷つける人と一緒にいる必要はない
それからのAさんとのやりとりは数カ月に及びました。「夫との仲を修復したい」と言っていたかと思うと、「もう離婚する」と言って帰っていき、自宅から「やっぱり言えなかった」と連絡がきたりもしました。気持ちが揺れていたようです。
ある時、Aさんは食卓の雰囲気を変えて気分を一新しようと、新しいお皿を買ったそうです。でも、せっかく作った食事に手を付けない夫、口をきいてくれない夫を思うと「つらくて、お皿を箱から出せない」というんです。私は「せっかくかわいいお皿を買ったのなら、箱から出そうよ。気分も華やぐよ。でも、お皿が入った箱を見ているだけでつらいなら、そのお皿は捨ててしまいなさい」と告げました。
植物を育てる時は、丈夫な苗を育てるために、出てきた芽を間引くことがあります。それと同じで、今後の自分の成長に必要かどうかを見極め、必要でないことは間引くことも、時には必要です。
私は断捨離が下手で、「これはいつか何かに使えるかも」と思ってしまい、ついなんでもかんでも捨てられずに取っておいてしまいます。そんな自分の性格がわかっているので、一層意識して、「丈夫な苗を育てるために。本当に大切なものを、大切にするために」と思って断捨離するようにしています。
特に異性関係では、それが大事だと感じています。もちろん、他人を思う気持ちは尊いものですが、好きという気持ちに引きずられ過ぎてはいけません。
Aさんの夫はハンサムで、経済力もある人だそうですが、家で落ち込み悩んでいる彼女を見ても、「悪かったな」の一言もなく無視し続けている。「暴力は論外だけれど、あなたをひどく傷つける言葉や態度を取る人とは、無理に一緒にいる意味はないんじゃないの? 彼があなたの成長の栄養になるのか、毒になるのか、よく考えてみて?」と話しました。