病院でも孤独死はしょっちゅう起きている
【中村】そうそう。それに、ドラマのように死ぬ間際まで意識があって、家族にお別れを言える人なんて、実はとっても少ない。今まで数え切れない患者さんを看取ったけど、亡くなる何日も前から意識がほとんどなくなっていたり、逆についさっきまで元気だった人が急変して、家族が駆けつけたときには昏睡状態になっていたりするパターンも非常に多いね。これも孤独死の一種だとしたら、病院の中でもしょっちゅう起こっているんやね。だから私は孤独死を怖がらないわけ。
【奥田】「誰にも看取られずに一人で亡くなる」という面だけ見れば、たしかに病院といえど孤独死はしょっちゅうですね。寝ているうちにポックリ逝きたいという方もたくさんいますが、それだって睡眠中の孤独死ですからね。
【中村】たぶん、病院と違って、死後何日も経ってから見つかるっていうのが、残酷なイメージと繫がっているんやろうけど、だったらすぐ見つかる仕組みを作っておけばええと思うわ。
【奥田】今は見守りサービスが色々な会社から提供されていますから、契約しておけば死後何日も経ってから、というケースは防げますね。他にも携帯電話を誰もが持っている時代ですから、いくらでも工夫はできそうですね。
死んだあとのことには、こだわらない
【奥田】ところで先生は、ご自分がいなくなったあとのことを、家族にお願いされていますか?
【中村】お願いって?
【奥田】例えばお墓とか、お葬式のこととか……。
【中村】あ~。そんなことは、何も言ってない! 勝手にどうにでもしてくれって思ってる。自分が死んだあとの墓も葬式も興味ないから、好きにしてくれってね。
【奥田】やっぱり先生らしいですね(笑)。死んだあとのことまで、心配していられるかって感じですね。
【中村】そうそう。死んだらそれで自分はすべて終わりやから、そのあとのことを心配しても時間の無駄。
【奥田】私は死んだら家族だけで密葬にしてもらって、海に散骨してって頼んでいるんです。
【中村】ふ~ん、先生はやっぱりロマンチストやね。
【奥田】お墓があったら、子どもや子孫に迷惑がかかるかなあと。
昔みたいに一つの土地にずっと住み続ける人は少ないですし、お墓の世話って何かと大変ですからね。あとあと「墓じまい」しようにも、けっこう手間とお金がかかって困っている人も増えているそうです。