「ちゃんとしなさい」はNG
例えば、「もう小学生だから、ちゃんとしなさい」「○年生だから、ちゃんとしなさい」などと言ってしまっていないでしょうか?
「ちゃんとしなさい」と言われると、子どもなりに、何かに気を付けなくてはならないんだろうな、ということはわかりますが、具体的にどう振る舞っていいかわかりません。これが繰り返されると、子どもの中には、「自分はちゃんとできていないんだな。何かが足りないんだな」と自己否定の考えがしみついてしまいます。また、具体的にどうしたらいいかわからないので、親の顔色をうかがうようになってしまいます。
ですから、こうしたアドバイスをする際は、子どもにどういう振る舞いをしてほしいのか、わかるように伝えることが大事なのです。
たとえば、いすに腰かけるときも「座ってちゃんとしなさい」と言うのではなく、「いすから落ちてケガをしてはいけないから、深く腰かけなさい」など、理由や行動を具体的に説明しながら伝えるようにしてください。
周りに迷惑をかけるのは当たり前
「周りに迷惑をかけないようにね」も、つい言ってしまいますが、これもよくありません。子どもは、迷惑をかけながら成長していくのが当たり前の存在。それを禁止されるのは、子どもとしてもつらいことですし、何度も言われていると、子どもは萎縮してしまい、困ったときにSOSを出せなくなります。たとえば、学校でいじめに遭ってつらい思いをしていたり、何かのストレスがたまり精神的に疲れてしまったりしても、「周りに迷惑をかけたり、ほかの人に負担をかけたりしてはいけない」と誰にも言わず我慢してしまうようになってしまいます。
そもそも親が子どもにこうした言葉をかけるときは、子どもの行動について漠然とした心配や不安があるときです。具体的な注意が思い浮かばないときに使える、親にとっては楽な言い方ではありますが、子どもに伝えるときは、もう少し具体的に伝える必要がありますし、具体的に伝えるべきことが思い浮かばないのであれば、そもそも伝える必要はないのではないでしょうか。
子どもが心身ともに健やかに育つには、親から受け入れてもらっているという感覚を持てることが、何よりも大切です。食事の時間中、立ち歩いたりすることなくよい姿勢で座っていられた、言われる前に自分からおもちゃを片付けた、など、親から見たら大したことのないことでも、「えらいね」「よくできたね」という言葉をたくさん使って子どもを褒めてあげるといいですね。
構成=池田純子
産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。