「共働き夫婦の老後生活」心配の多くは杞憂だが…

ご夫婦に私がしたアドバイスというのは、「老後資金はそんなに心配しなくても大丈夫ですよ」です。

「そんなアドバイスはだれからもされたこと、ありません!」とご夫婦も仰天していました。

さて、ご夫婦が「老後資金を心配しなくても大丈夫」だった理由は、「共働きの夫婦」であるからです。

まず、厚生年金がダブルで受け取れます。しかもご夫婦の所得はそれなりに高いので、65歳まで働いたとすると、夫婦合計の年金額は、月額30万円以上になるのではと予測しました。詳しくシミュレーションをしたい場合には、「ねんきんネット」で予想金額を調べることができます。ゆとりのある暮らしとはいきませんが、生活には困らないと思います。

子供の年齢表示バーと計算機と人間の手
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

しかも、お二人とも退職金のある会社にお勤めでした。これが老後資金になり、余裕資金として使えると思います(外資系企業は、退職金制度がない場合もあるので注意を)。

ですので、そんなに心配をしなくてもいいのです。さらに余裕のある老後生活をするためにはiDeCoやNISAを利用して増やすのがいいでしょう。

「それよりも、もっと近々で心配事があります。お気づきでしょうか」と私はご夫婦に問いかけました。

老後資金より怖い「目の前のリスク」とは

老後資金というのは、25~30年先に必要になるお金です。でも、お二人にはお子さんがいます。子どもが大学に進学するのは、約10年後。老後資金よりも教育資金のほうが先に必要になるお金です。

現在、お二人の貯蓄は300万円ぐらいあるということなのですが、やはりその金額では足りません。

大学に進学すると、教育費の負担がとても大きくなります。日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査」によると、大学の入学費用として約81万円、そして毎年150万円の教育費がかかるので、入学から4年間の総額として、約700万円(私立文系)かかります。国立大学ならばグッと安くはなりますが、もし私立理系の場合は、800万円以上です。

しかも、それは学費だけです。自宅外通学になると、アパート代や仕送りなどのお金がかかります。平均仕送り額は年間約96万円。海外に留学したり、大学院に進んだりした場合には、別途その費用がかかります。さらにあまり想像したくはありませんが、留年してしまうともっとお金は必要になってきます。

国立に入ってくれれば、教育費の負担についてはかなり助かりますが、こればかりはわかりません。子ども一人に対して大学に行っている間の学費などを含めた支出の総額としては1000万円ぐらいかかると思っていたほうがいいでしょう。