落とし穴④ 配偶者の死亡で年金が半減

また、配偶者の死亡も大きな収入のダウンになります。さらに、会社員の共働き夫婦の場合、二人とも厚生年金を受け取っているので、遺族厚生年金はほとんど期待できません。

配偶者が死亡すると、自分の年金だけになってしまうかもしれません。夫がもし企業年金を受け取っていた場合には、死亡すると企業年金も終わってしまいます。

最初にご夫婦での年金受給額が月額30万円ぐらいになるのではと予想をしました。しかし、配偶者が亡くなると約半額になるのです。つまり月額15万円の年金になるということです。

二人の生活が一人になったからといって、生活費が半分になるわけではありません。当然、生活は厳しくなると思います。そのための備えは必要です。

年金の繰下げ受給をすれば、ゆとりのある老後が実現できる

では、どうすればいいのでしょうか。最初に例に出した40歳の相談者を参考にしながら解説をしましょう。

近々に必要になる教育資金の準備が最優先として、無理のない範囲で老後資金の準備もしておきたいです。老後資金を作るのには、税制優遇の大きいiDeCoが最適です。夫婦でiDeCoの限度額いっぱいまで利用するようにしましょう。

そして、公的年金の増額も検討しておきましょう。定年を延長する企業も多くなっていますから、長く働くことで老後資金を増やすこともできますし、厚生年金の受給額を増やすこともできます。さらに繰下げ受給をすると年金の増額になります。

年金の受け取りを1年遅らせば、8.4%の増額になります。70歳まで繰り下げれば、42%の増額です。

夫婦二人の年金を繰り下げると、受給額もグッと増額することができて、ゆとりのある老後生活に近づきます。さらに老後の生活費のベースである年金の受給額が増えているから、たとえ一人の生活になったとしても、収入減の影響を少なくできます。ぜひ、検討してみてください。

長尾 義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員

お金のしくみ、保険のカラクリについての得する情報を発信している。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。いくつかの出版社の編集部を経て、1997年に「NEO企画」を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書には『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『かんたん!書き込み式 保険払いすぎ見直しBOOK』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、などがある。