母が教えてくれた「人のために役立てれば自分も楽しい」という考え方

今回ご紹介したような営業のやり方を、お客様サイドから見たらどうでしょうか。短期的には自社の売り上げにならなくても、お客様はそんなことまでしてくれる営業マンや会社に対して、温かい気持ちを抱くかもしれませんし、その気持ちを口コミで伝えてくれるかもしれません。短期的には収支がマイナスでも、中長期で見たらそちらのほうが会社にとってプラスになるのです。

たとえば新居のお披露目パーティーを想像してみましょう。お客様はそこで、「実はこういうことがあってね」と物件を見つけるまでのストーリーを語ってくださるかもしれません。「へえ、リクルートコスモスって、そういう会社なのか。じゃあ今度うちも家を買おうと思っているから、頼んでみよう」。こんな風に、よい評判が伝わっていくのではないかと思うのです。

こうした考えを私が持つようになったのは、両親、とりわけ母の影響が強いかもしれません。母は自分のものを他人と分け合うことを「当たり前」と思っていました。もう30年ほど高齢者介護施設でボランティアを続けていますが、80代になった今も楽しそうにボランティアに出かけていきます。私はその姿を見ながら、「人のために役に立てて、楽しそうにしているのはいいな」と感じていました。母の背中から、自然と伝わってくるものがあったと思います。

リクルートコスモス時代の営業経験を含め、そうしたさまざまな体験が、今のLIFULLの社是や経営理念につながっているのかもしれません。

(構成=久保田正志)