人間関係のトラブルに巻き込まれてしまう

(3)「あの人には注意したほうがいい」

社内の人間関係には、派閥があったり、裏ボス的な存在がいたり、ぱっと見ただけではわからないことがたくさんあります。そこで身近な上司から「あの人には注意したほうがいい」と教えてもらえると、確かに助かることも多いでしょう。

しかし、よくよく聞いてみると、単に噂好きだったり、ライバルの評判を落とそうとしているだけだったり、自分の派閥に引き込もうとしているだけだったりといった理由でそうした情報を伝えている人も少なくないようです。

まったく悪気がなく、親切心から言っているだけのこともあるかもしれません。しかし、それをあまり真に受けてしまうと、あなた自身もそうした派閥の一員と取られたり、一緒に悪口を言っているかのように見られ、職場での立場が悪くなる可能性もあります。社内の人間関係を複雑にしてしまい、トラブルに巻き込まれることもありますし、ストレスを生んでしまいます。

耳打ちにはノーリアクションで

こうした上司に対処するには、興味のないふりをするのが一番です。上司が部下のあなたに求めているのは「そうなんですか。知りませんでした」「教えてもらってありがとうございます」といったリアクションです。「相手が知らないことを教えてあげた」という優越感や、「感謝してもらえた」という満足感がほしいのです。ですから、相手に肩透かしをくらわせるぐらいに、関心を見せないでいるのがよいです。

上司が話し始めても、パソコンの画面から視線を離さず作業を続けたり、スマホを見たりしながら、「へえ、そうなんですね」ぐらいの反応にとどめておきます。期待していたリアクションがないことがわかれば、相手もいずれ、「打っても響かないやつだな。こういった話をしても意味がないな」とあきらめるでしょう。

3つのタイプの上司を紹介しました。いずれも悪気はなく、一見いい上司に見えますが、うまく対応しないとストレスの源になり、自分の心身の健康を損なうことにもなりかねません。また、こうした上司は仕事ができる人であることも多く、部下から指摘して行動を変えてもらうのも難しいでしょう。ですから、いかに自分が防御力を高めて、うまく立ち振る舞うかといった発想が大事になります。ぜひ参考にして、メンタルヘルスの不調に追い込まれることのないよう、気を付けていただきたいと思います。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。