部下をメンタル不調に陥れる上司には、「一見いい上司に見えても、実は部下を精神的に追い込んでしまうタイプがいる」と、精神科医で産業医の井上智介さんは指摘する。そして「こうした上司がよく口にする言葉がある」という――。
頭を抱える人々
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信頼? 実は単なる無責任

「いい上司かヤバい上司か」は、見た目だけでは判断がつきにくいものです。しかし、メンタルヘルス不調を抱える部下の上司には傾向があります。その傾向が一番表れやすいのが、言葉です。次の3つの言葉をよく口にする上司には、注意してください。

(1)「君に任せるよ」

上司にこう言われると、信頼され、認めてもらっている印象を持ちますし、仕事の裁量権を与えてもらってうれしくなるかもしれません。もちろん、任されて何の問題もなくうまくいけばいいのですが、問題なのは、うまくいかなかったときです。

本当に信頼して任せている上司もいるかもしれませんが、中には「君に任せるよ」と言うことで、すべての責任を部下に押し付けようとする上司もいます。その場合は、部下がつまずいたりピンチに陥ったりして相談すると「いや、全部任せているんだから、最後まで自分やって」と、まったく助けてくれないことがあります。

トラブルで謝罪する時にも、「うちの○○がミスをして申し訳ありません」と、部下の責任を強調するような謝り方をしたりします。つまりこうした上司にとって「君に任せるよ」という言葉は、部下に全部丸投げして責任転嫁するためのものなのです。これでは部下はたまりません。

いい上司というのは、部下がどんな結果を出しても、すべて自分の責任と受け止めて、いっしょに乗り越えていこうと言える人のはず。しかし、「任せるよ」という言葉を安易に受け止め、「いい上司だな」と油断していると、最後に手のひらを返される可能性があるわけです。

対策としては、とにかく“報・連・相”をした証拠を残しておくことです。電話や口頭で指示されたことも、あとで「先程、指示された○○については、○日までに終えて確認していただくようにします」など、指示された内容、自分が取ろうとしている行動の方向性や内容を記録し、メールやチャット、文書にして残しておくことです。あとから「そんなことは聞いていない」と上司に言わせないために、しっかりと対策をとっておきましょう。