50歳を過ぎたからといって、突然「働かないおじさん」になるわけではない。歳を取るほど、若い社員よりも能力が低くなり、新しいことへの適応力が劣るようになり、仕事に取り組む意欲が乏しくなるというエビデンスはどこにも存在しない。

なのに、「50代より、若手」「そうそう、使えるのはZ世代!」だのと、あたかも年齢が能力を左右するがごとき言説が繰り返される。50代は厄介者扱いされ、若手からの突き上げは大きくなるばかりだ。

ビジネスの論理からいえば、年寄りは嫌われる。悔しいけれど、これも「あるがままの現実」である。どんなメリトクラシー(能力主義)社会の勝者であれ、老いから逃れるのは無理だ。

「パラダイム・シフト」はすでに起こっている

コロナ禍で一気に加速したリモートワークの環境やロボット化により、求められる人材、評価される人材はこれから大きく変わる。

世界経済フォーラム(World Economic Forum)の報告書では、「ロボットの導入が進めば、2022年までに7500万人の雇用がなくなる」と警鐘を鳴らす一方で、「今後5年間で、正味5800万人の新規雇用も創出される」と試算している。

河合薫『THE HOPE 50歳はどこへ消えた?』(プレジデント社)
河合薫『THE HOPE 50歳はどこへ消えた?』(プレジデント社)

今や「45歳定年制」すらささやかれ、50代はおろか40代もお荷物扱いされかねない状況だ。パラダイム・シフトの入り口でまごまごしている時間はない。手遅れになる前に具体的に動く必要がある。

人生には、放っておいても勝手に起こる出来事と、自分から仕掛けて起こる出来事の2つの種類がある。今こそ、50歳の意地を見せ、アクションを起こす時だ。「強い心、知性、勇気があれば運命の力を阻み、しばしばそれを逆転することが可能である」と言ったのは、フランスの作家、アルベール・カミュだったか。

企業経営の世界にパラダイム・シフトの概念を普及させたアメリカのコンサルタント、ジョエル・バーカーは、「パラダイム・シフトとは、新しいゲームに移行すること、ゲームのルールがすっかりかわってしまうことだ」と定義した(『パラダイムの魔力』)。

人生は一本道ではない

日本では今まさに、働く人々のパラダイム・シフトが進行中だ。

“新しいゲーム”は、「あなた」が想像する以上に厳しく、困難を伴うかもしれない。しかし、想像を裏切るほど「面白い!」ことが待っている可能性も高い。

実際、シニア転職で新しいチャンスをつかむ人も多くなってきた。人生は一本道ではない。いくつもの曲がり角を抜けて、「私」だけの生き方を作る“ゲーム”なのだ。

そのためには「私」が変わること。「私」の思考を変えることで、“ゲーム”は俄然面白くなる。

それは果たしてどんな“ゲーム”なのか。そして、どうすればその“ゲーム”を生き抜けるのか。その答えを探して、今回『THE HOPE 50歳はどこへ消えた?』という本を書いた。読者の皆さんと一緒に考えていきたいと思う。

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