うまく評価できる人になるための禅ワーク

他人をうまく評価できるようになるには、どうすればよいのでしょうか。禅ワークをご紹介しましょう。

まずトライしてほしいのは、自分の身体を評価することです。毎日、自分の身体をねぎらう、褒める、承認する。たとえば、一日じゅう歩いた日なら、その夜、布団の中で「膝が歩くのを支えてくれたな」「足の裏も頑張ってくれた」など、自分の身体に対して感謝と評価を与える時間を持ってください。

両足院にて
撮影=水野真澄

重いバッグを持ち歩いていたら「肩や腕が大活躍してくれた」、頭の中でぐるぐる悩んでいたら「いっぱい働いてくれてありがとう」……。こんなふうに、なるべく言語化していく。自分をねぎらって評価していると、人に対しても同じことができるようになります。上司にもできますし、もちろん部下にもできる。

一日に一回は、自分をねぎらう時間をしっかりと持ってほしいですね。

身近にあるものを評価するのもよいでしょう。たとえばスマートフォン。私たちの生活に欠かせないツールと考えたら「いつもありがとう」と、自然にねぎらう気持ちが湧き起こってきます。

そう考えると、いつも使っている茶わんや箸にも「なかったら食べることもできない。ありがたいな」と思えてくるでしょう。

こうしたワークをつづけていると、会社の同僚だけでなく、警備の人や掃除の人など、いわゆる裏で支えてくれている人たちにも声をかけることができるようになります。「いつも見守ってくださってありがとうございます」とか「きれいにしてくれて感謝しています」とか、そこに気づいて声をかけられるようになる。そうすると自分のことがまた好きになれるのです。

悩んでいる人の「今」は長い

最後に、それでも評価されないことが納得いかないという人にお伝えしたいことがあります。それは「今」という時間を縮めてほしいということです。

「今」というのは、この瞬間のことと思われがちですが、悩んでいる人の「今」は、この瞬間だけでなく、もっと長い時間です。つまり評価されていないと感じてからの時間、そしてこれからも評価されないだろうと感じる時間、それらをまとめた時間を「今」ととらえています。評価されていないと悩んでいる人は「今」が長いのです。

しかし感覚をひらき、周りにある幸せを感じ、本当の心がある「今」に戻ると、時間は縮められます。きれいな音を聴く、いい匂いを嗅ぐ、美しいものを見るなどすると、幸せを感じることはできます。

人は誰もが変わりつづけます。あなたも変わります。評価されていないと感じても「今」に戻れば、その評価がずっとつづくわけではないと思えるでしょう。

今はこうだけど、次はわからない。変化を前提にすると希望が生まれます。そのことも忘れないでほしいと思います。

構成=池田純子

伊藤 東凌(いとう・とうりょう)
両足院 副住職

京都「両足院」副住職。両足院で生まれ育ち、3年間の修行を経て僧侶に。アメリカFacebook本社での禅セミナーの開催やフランス、ドイツ、デンマークでの禅指導など、インターナショナルな活動も。7月には禅を暮らしに取り入れるアプリ「InTrip」をリリース。著書に『月曜瞑想』(アスコム)がある。